令和5年5月から、ホームページを開設して介護保険制度をはじめとする情報提供を行ってきました。
このブログでは、介護保険制度はもとより、運営指導・監査対応や行政対応等の、どちらかといえば介護事業所の経営者や管理者、ケアマネージャー等の、いわゆる「介護や福祉について専門性がある方々を対象」にしてきました。
しかし、税理士でありながら老人ホームの施設長の経験がある私だからこそ、これから老人ホームや高齢者施設を選ぼうとしている方々のお役に立てることがあるのではないかと考えていました。
そこで今回、ブログのカテゴリーに新たに「老人ホーム入居のチェックポイント」としての項目を設けることにしました。
私自身、前述のとおり老人ホームの施設長を経験していることと併せ、令和5年2月に幻冬舎より「老人ホーム施設長奮闘記」を出版しました。このエッセイでは、「老人ホームでの住まいを創る」には、入居者ご本人だけではなく、ご家族や他の入居者の方々、老人ホームを支える職員とともに生活を創ることをエッセイとして書き上げました。
このブログが、これから老人ホームや高齢者施設への入居を検討、これから老人ホームの見学に臨まれる方々の少しでもする方々のお役に立てることを心より願っています。
老人ホームを訪れた時の「雰囲気」を肌で感じよう
ご自分が、または親御さんが老人ホームに入居される時、全く見学することなく入居してしまうというケースはあまりないでしょう。
普通、入居を検討する老人ホームに直接訪れ、施設見学を行うと思います。この見学を行う時に施設の正面玄関から入る時、この老人ホームを訪れて、果たしてどのように感じるでしょうか。
いきなり抽象的な問いを投げかけておりますが、人間の感覚というものは鋭いもので、この「第一印象」というものは結構当たるものです。
そこから、この老人ホームの施設内をいろいろと見学するのですが、この感覚がなぜ大切なのでしょうか。
それは、この老人ホームに入居するということは、これから「この場所で新たな生活が始まる」ということなのです。
例えば、かつて自分が自宅を購入する場合、価格帯や地域を調べ、それから物件見学すると思います。その時に、「第一印象が良くない」物件を、わざわざ購入するでしょうか。
先ずは、先入観念無しに、自分がこの老人ホームにどのような感覚を抱いたのかを大切にしましょう。
この項目のまとめとして、私から一言。
昨今、様々な老人ホームの選び方における書籍やネットでの情報が氾濫しています。
もちろん、老人ホームを選ぶのに、価格帯や地域を含め、詳細なチェック項目を確認しながら見学するのでしょう。
では、詳細なチェック項目を厳密に確認していけば、自分にとって、そして親御さんとって本当に最高の選択の老人ホームを選ぶことができるのでしょうか。
私は、詳細なチェック項目も否定はしません。しかし、老人ホームはあくまでも「生活の場」なのです。であるならば「第一印象」、つまり「自分の感覚を大切にする」ことを忘れないようにしてください。
老人ホームを訪れた時の「職員」をよく見よう
入居を検討する老人ホームを訪れ、施設見学を行う場合正面玄関から入る瞬間に、ぜひ耳をそばだててください。その時、笑顔で「こんにちは」という元気な挨拶を受けることができれば、第一段階は「合格」です。
もちろん、老人ホームはご入居者対応で事務室等の職員が出払っている場合がありますが、反面、事務所に職員がいるにもかかわらず、来客に対して対応をしないような施設は論外です。
それは、繰り返しになりますが、老人ホームは生活の場です。そしてその生活を創るのは、入居者だけではなく、この老人ホームの職員も一緒なのです。事務所の職員がそのような対応をしているのであれば、仮に入居してからも入居者に対する職員の対応もそのような対応になることは想像しやすいと思います。
老人ホームを訪れた時の「施設の臭い」を感じよう
老人ホームでは、見学すると「施設の臭い」を感じることがあります。もちろん老人ホーム側も、この臭いには注意しているものと思います。
しかし、職員として施設で働いていると、この臭いの感覚がマヒしてくることがあるのです。確かに、老人ホームに介護度の高い方々が入居されていると、当然、排泄介助が多くなり、これらの臭いが強くなることがあるでしょう。
そして、私の経験を申し上げると、実際に認知症を患っている方が、自分の居室の所々で排尿、排泄しているようなケースもありました。
老人ホームを見学、そしてご自分が、または親御さんが入居を検討している場合、その実際に入居する部屋のみではなく、周囲の居室の状況や通路部分にも出てみて、ぜひ臭いを感じてください。
職員が仕事で臭いの感覚がマヒするという話と、自分も嗅覚がマヒするのではないかという話は全く別の話です。良い老人ホームであれば、こうした臭いに対する配慮も当然、気を配っていると思います。
繰り返しになりますが「老人ホームは生活の場」です。そして見学する私たちは、これから入居を検討する「顧客」なのです。
その点は、遠慮なく、しっかりと確認をしましょう。
老人ホームを訪れた時の「音」を感じよう
老人ホームに入居で以外にトラブルになるのが、この「音」なのです。老人ホームに入居すると、一日の多くの時間をこの施設内や居室で過ごすことが多くなると思います。
以下に老人ホーム全体の話と居室の話をしたいと思います。
まず老人ホーム全体の話で言えば、その施設が鉄道の線路や幹線道路に隣接していると、ある程度の騒音が当然生じます。この騒音について、実際に入居する方がどのように感じるかというのは、「その人それぞれによるもの」だと思います。
次に、見学のうえ入居を検討し、あてがわれる居室の周囲(つまり隣の居室等)で、実際にどのような物音がするのか。見学した一瞬の時間で判断してはなりません。昼間ならば気にならないかもしれませんが、問題は就寝する「夜」に音がきにならないか、ということなのです。
では、この「音」に対する判断はどのようにすれば良いか。
これは一択、必ずこの老人ホームの「体験入居」を行ってください。
体験入居の生活の中で「音」が気になるかどうかのチェックを行うのです。
また、今後、このブログでは「老人ホームの具体的な選び方」や「体験入居のチェックポイント」等を通じて、これらの情報を示してまいります。
老人ホームを訪れた時の食事の「味覚」を感じよう
老人ホームでの生活の大きな楽しみは食事です。老人ホームの見学をした時や、体験入居の際には、この食事内容について、ご自分が、または親御さんが満足いくものなのかを判断しましょう。
よく、「カロリー表示」と言いますが、まずは単純に食事の「味」が合うのか、自分の舌の感覚を感じてみましょう。
そして、食事の「量」にも注意が必要です。
これは私の施設での経験ですが、この老人ホームの所在地は関東なのですが、なぜか入居者は関西のご出身の方々が多かったのです。「お味噌汁のダシの取り方」、「うどんのお汁の色」等々、様々な話が出てきたものです。
また、「食形態の対応」についても、よく確認しましょう。入居時点では、お元気であったとしても、常食を口から召し上がることができても、だんだん嚥下の状態が悪くなってきた(飲み込みが悪くなってきた)場合の対応等についても確認が必要でしょう。
また、この「老人ホームの食事」の話も、今後、情報を示してまいります。
老人ホームを訪れた時の入居者の「年齢層」も確認しよう
簡単に老人ホームと言いますが、老人ホームは「概ね65歳以上」であれば入居することができるのです。こう書いたのは、現在の老人ホームへの入居者の年齢層は、概ね80歳代後半~90歳代前半ぐらいであると思います。
そうであるならば、同じ老人ホームの入居者には65歳の入居者と95歳の入居者が存在することとなり、この年齢差は実に「親子ほどの年齢差」があるのです。
これは、同じ高齢者という括りで語るのは酷であり、身体的状況も大きく異なるであろうですし、入居者同士の話題のやり取りにも苦労すると思われます。また上記入居者が同じクラブ活動やアクティビティを行うということ自体にも、かなり無理が生じるでしょう。
こうした面からも、老人ホームの生活を創るうえで、入居者同士の年齢層にも十分注意することが必要なのです。
まとめ
今回は、老人ホームを見学する時に「自分の五感」を大切しましょう、と銘打ってブログを書いてみました。
老人ホームを見学する時に、基準も何もなく、ただ見学しても意味が大きくありません。それだからこそ、見学に先立ち、入居にあたっての「何を優先するのか」という、優先順位をしっかりと決めることは大切です。
しかし、いくら詳細なチェック項目を厳密に確認しても、自分にとって、そして親御さんとって本当に最高の選択の老人ホームを選ぶことができるわけではないのです。
繰り返しにはなりますが、「老人ホームは生活の場」なのです。そうであるからこそ、老人ホームへの入居に先立ち、各項目に挙げた「自分の五感」を大切にすることが本当に大切であると思います。
本日もブログをお読みいただき、ありがとうございました。