【税理士が解説】定員超過利用に該当した場合の介護報酬の減算や指定取消等のリスクについて考えよう(「地域密着型通所介護」を参考例にとらえて)

行政処分(返戻・指定取消・連座制)

はじめに

 各地域密着型通所介護におけるサービス提供を行う中で、事業所運営で「定員超過利用減算」が生じる恐れがあります。今回は「地域密着型通所介護」を参考例にとらえ、定員超過利用減算の算定方法や減算の内容などについて計算例と根拠を交えながら、具体的に確認をしたいと思います。

 そもそも、今回「なぜ、地域密着型通所介護を参考例にしたのか」という理由は、通所介護や他の介護サービス類型と比較し、「運営している介護サービス事業者が比較的小規模事業者が多く」、こうした事業所において「定員超過利用減算」に対する考え方が追いついていない側面を目にしたことが私の大きな理由です。

 よって、今回は具体例を使いながら、ひとつひとつ確認をしてみようと思います。

「定員超過利用減算」についての計算方法を確認しよう(「最大の利用者数」について)

まず、地域密着型通所介護における「定員超過利用減算」について、事業所における「1ヶ月ごとに利用者数の平均値を計算して判断する」こととなります。

これは、サービス提供日ごとに最大の利用人数を割り出したうえで、1ヶ月分の合計数から平均値を計算する」こととなります。つまり、これは「単純な来所人数ではなく、同時にサービスを受けた最大の利用者数という点がポイント」となります。

以下【計算例1】において計算例を記載します。

【計算例1】

※利用定員18名の地域密着型通所介護事業所における「ある1日の利用者数」(計算例)

①利用時間   9:00~17:00 利用者数10名
②利用時間   9:00~12:00 利用者数   5名
③利用時間 13:00~17:00 利用者数   7名

 上記【計算例1】においては上記のように、利用定員は「18名」であり、単純にある1日の利用者数を①+②+③のように合算すると利用者数は「22名」なりますが、これがそのまま「最大の利用者数」となるわけではありません。

 実は、この【計算例1】の場合の「最大の利用者数」とは、①+③を合算した「17名」が事業所全体の1日の利用者数ということになります。

 これは利用定員「18名」に対して、ある1日の「最大の利用者数」は「17名」ということになります。よって、仮に当該事業所でこの状態が継続した場合であっても定員超過利用減算の対象となりません。

 つまり、上記のとおり事業所における各サービス提供日ごとの「最大利用者数」を導き、そしてこの「平均利用者数」を計算することによって、事業所における利用定員の確認を行うことになります。

では、次の項目では、「平均利用者数」についての計算方法を確認してみましょう。

「定員超過利用減算」についての計算方法を確認しよう(「平均利用者数」について)

 前項では、各サービス提供日ごとの「最大利用者数」の求め方を確認しました。本項では、この各サービス提供日ごとの「最大利用者数」より、定員超過利用減算の対象の判断基準となる事業所における「平均利用者数」を計算例により確認してみましょう。

【計算例2】 ※定員を超過している場合

※利用定員18名の地域密着型通所介護事業所における「最大利用者数」と「サービス提供日数」(計算例)

提供日数1日2日3日4日5日6日7日8日9日10日
最大利用者数18名18名18名18名19名18名18名18名18名18名

 上記を計算すると以下のとおりです。

(18+18+18+18+19+18+18+18+18+18)÷10日=18.1名

 この【計算例2】では、上記のとおり「18.1名」となり、「小数点以下は切り上げる」ため、平均利用者数は19名となります。よって、利用定員18名に対して「定員超過」ということになります。

【計算例3】 ※定員を超過していない場合

※利用定員18名の地域密着型通所介護事業所における「最大利用者数」と「サービス提供日数」(計算例)

提供日数1日2日3日4日5日6日7日8日9日10日
最大利用者数18名18名17名17名19名18名18名18名18名18名

 上記を計算すると以下のとおりです。

(18+18+17+17+19+18+18+18+18+18)÷10日=17.9名

 この【計算例2】では、上記のとおり「17.9名」となり、「小数点以下は切り上げる」ため、平均利用者数は18名となります。よって、利用定員18名に対して「定員内」ということになります。

 「平均利用者数」については、【計算例2】、【計算例3】のとおりとなります。

つまり、【計算例3】のとおりであれば利用定員「18名」に対して平均利用者数は「18名」ということになりますので、これらの規定上では減算の対象とはならないということです。

  しかしながら、【計算例3】の5日目のように「1日の最大利用者数が利用定員を超過している状態」は、事業所運営として決して好ましいものではなく、このような状況が恒常的に継続しているのであれば、運営指導の際、運営基準違反として指摘される可能性もあるということを認識すべきなのです。

 つまり、そもそも日頃の事業所運営において、利用定員に対し「最大利用者数」を常に意識し、そのうえで「最大利用者数が利用定員を超えない」ような運営が大切です。

では、これで計算方法は分かった、次に根拠を確認しよう

 では、ここまで項目1~3で用語や計算方法について確認してきました。この項目では、引き続き以下につき、根拠を確認しましょう。

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●「定員超過利用に該当する場合の措定単位数の算定について」

① 当該事業所の利用定員を上回る利用者を利用させている、いわゆる定員超過利用に対し、介護給付費の減額を行うこととし、厚生労働大臣が定める利用者等の数の基準及び看護職員等の員数の基準並びに地域密着型通所介護費等の算定方法(平成12年厚生省告示第27号。以下「地域密着型通所介護費等の算定方法」という)において、定員超過利用の基準及び単位数の算定方法を明らかにしているところであるが、これは、適正なサービスの提供を確保するための規定であり、定員超過利用の未然防止を図るよう努める。

② この場合の利用者の数は、1月間(暦日)の利用者の数の平均を用いるこの場合、1月間の利用者の数は、当該月におけるサービス提供日ごとの同時にサービスの提供を受けた者の最大数の合計(【計算例1】)を、当該月のサービス提供日数で除して得た数とする。この平均利用者数の算定に当たっては、小数点以下を切り上げる。

【コメント】→【計算例2】、【計算例3】を参照。

③ 利用者の数が、通所介護費等の算定方法に規定する定員超過利用の基準に該当することとなった事業所については、その翌月から定員超過利用が解消されるに至った月まで、利用者の全員について、所定単位数が通所介護費等の算定方法に規定する算定方法に従って減算され、定員超過利用が解消されるに至った月の翌月から通常の所定単位数が算定される。

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 項目1~3について記載した【計算例1】~【計算例3】の根拠を表してみました。次項では、「減算に該当」した場合に該当した場合、上記③のとおり減算されることとなるが、その根拠を表してみます。

「減算に該当」した場合の減算の算定方法と根拠を確認しよう

 前項のとおり事業所で「定員超過利用」が生じた場合、本項では減算の算定方法とその根拠を確認してみましょう。

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●厚生労働大臣が定める利用者の数の基準及び看護職員等の員数の基準並びに地域密着型通所介護費の算定方法

イ 指定地域密着型通所介護の月平均の利用者の数が次の表の左欄に掲げる基準に該当する場合における地域密着型通所介護費については、同表の右欄に掲げるところにより算定する。

【計算例4】※定員超過利用があった場合▲30%減算による

厚生労働大臣が定める利用者の数の基準厚生労働大臣が定める地域密着型通所介護費の算定方法
施行規則第131条の3の2の規定に基づき市町村長に提出した運営規程に定められている利用定員を超える指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準の所定単位数に100分の70を乗じて得た単位数を用いて、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準の例により算定する。

 つまり、事業所において「定員超過利用」があった場合、上記【計算例4】並びに、前項③により、以下のとおり減算されることとなります。

【計算例5】※定員超過利用があった場合の減算の計算方法

利用者全員全員についての所定の単位数 × 100分の70 = 所定の単位数の▲30%

 定員超過利用があった場合、前項③のとおり、「その翌月から定員超過利用が解消されるに至った月まで、利用者の全員について、所定単位数が通所介護費等の算定方法に規定する算定方法に従って減算される」こととなります。

つまり、定員超過利用が解消された場合、解消されるに至った月の翌月から、はじめて通常の所定単位数が算定されることとなります。

 では、この定員超過利用の状態が生じた場合、この状態が継続している場合には、指定権者は事業所に対してどのような取扱いとなるのでしょうか。次項では、その取扱いと根拠について確認をしてみます。

定員超過利用に対する減算に該当状態が継続した場合の指定権者の取扱いについて

 前項のとおり事業所で「定員超過利用」が生じた場合、本項では減算の算定方法とその根拠を確認してみましょう。

 前項では定員超過利用があった場合、【計算例5】により、事業所の介護報酬が減算されることとなりますが、事業所として減算されていれさえすれば、何もないのでしょうか。そのようなことではありません。

 根拠を踏まえ、次のとおりとなります。

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●「定員超過利用に該当する場合の措定単位数の算定について」

④ 市町村長は、定員超過利用が行われている事業所に対しては、その解消を行うよう指導する。当該指導に従わず、定員超過利用が2月以上継続する場合には、特別な事情がある場合を除き、指定取消しを検討する。

⑤ 災害、虐待の受入れ等やむを得ない理由による定員超過利用については、当該定員超過利用が開始した月の翌月から所定単位数の減算を行うことはせず、やむを得ない理由がないにもかかわらずその翌月まで定員を超過した状態が継続している場合に、災害等が生じた月の翌々月から所定単位数の減算を行う。

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 上記④のとおり、つまり定員超過利用に関して事業所として単に介護報酬の減算を受ければ良いということではありません。

まず、この定員超過利用に対する指定権者からの指導が行われ、その指導に従わず、「定員超過利用が2月以上継続する場合」には、特別な事情がある場合を除き、指定取消が検討されるということになってしまうのです。

 つまり、「定員超過利用」があった場合、単に【計算例5】のとおり事業所の介護報酬が減算されるのみではなく、事業所に対し指定権者から指定取消が検討されるという状況となってしまうということなのです。

まとめ

介護保険事業により運営を行ううえで、指定権者により指定を受けて介護サービスが提供されることとなります。具体的には、人員基準・施設基準・運営基準によるところとなります。

つまり、この基準に従い、事業所の利用者の定員が定められているのです。この事業所の利用定員を遵守することは、事業運営において利用者の安全や介護サービスの一定の質の担保の観点から非常に重要な要素であるといえるのです。

このように、事業所として利用者の定員に対する感度が鈍いということは、前述のとおり介護サービスに対する質の担保はもとより、結果として「定員超過利用」は、指定権者から指定取消が検討されるなど、事業運営が継続することができないという事業リスクに直面することになってしまうのです。

 事業運営を行ううえで、こうしたコンプライアンスを遵守する考え方や体制整備については、日頃より繰り返し確認・注意が必要です。

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