介護報酬改定の方向性(居宅介護支援)を確認する介護報

介護報酬改定

 令和5年12月17日現在、社会保障審議会介護給付費分科会において、各個別サービスの報酬改定の方向性について概ね明確となり、ここで運営基準改正に関する事項も明らかになっていくことと思います。

さて、私も介護報酬改定に関するセミナーを開催している関係で、このブログ更新が遅くなってしまいました。ここから年末年始にかけた時期で介護報酬改定における各個別サービスの重要論点を確認しながら、重要な論点についてキャッチアップしていこうと思います。

今回のブログでは、個別論点として「居宅介護支援」を取上げようと思います。

居宅介護支援は、地域包括ケアを実現していくために中心となっていくサービスです。しかし、令和6年介護報酬改定においても「介護職員処遇改善加算等」の対象となっていないことからも、今回の報酬改定の各個別サービスの重要論点に、その配慮がちりばめられているように、私は思います。

では、早速、介護報酬改定における居宅介護支援に関する重要論点をとりまとめて書いてみたいと思います。

入院時情報連携加算の算定要件の見直し

 令和6年度介護報酬改定において、先ず入院時情報連携加算の算定要件について取り上げたいと思います。以下のとおり算定要件が変更となります。併せて様式例の「入院時情報提供書」の見直しも検討されています。

 【図1】のとおり、入院時情報連携加算を算定している利用者のうち、43.0%が1日以内にケアマネージャーから医療機関に情報提供されており、90.6%が3日以内に情報提供されていました。

 よって、以下のとおり利用者の情報提供に関する期間の変更がなされることとなりました。

(現在)入院後3日以内又は入院後7日以内に病院の職員に利用者の情報提供。

  ↓

(変更)入院当日中又は入院後3日以内に病院等の職員に利用者の情報提供。

【図1】

出典:令和5年11月6日 第230回社会保障審議会介護給付費分科会(第230回)資料5  P13より引用

通院時情報連携加算の算定要件の見直し

 次に、入院時情報連携加算の算定要件について取り上げたいと思います。現在、医師等から利用者に関する必要な情報提供を受けた場合に評価している通院時情報連携加算について、利用者が歯科医師の診察を受ける際に同席した場合も評価の対象となります。

 【図2】のとおり、ケアマネージャーがアセスメントの際に口腔衛生について評価している項目では、歯の状況の把握が69.0%と最も多く、評価方法についても、約6割が歯科医師・歯科衛生士からの情報収集を行っていました。

【図2】

出典:令和5年11月6日 第230回社会保障審議会介護給付費分科会(第230回)資料5  P17より引用

ターミナルケアマネジメント加算の算定要件の見直し

 ターミナルケアマネジメント加算について、現行は「末期の悪性腫瘍の患者に限る」とされています。今回の介護報酬改定では、人生の最終段階における利用者の意向を適切に把握することを要件したうえで「対象となる疾病を限定しない」こととなりました。

ターミナルケアマネジメント加算の算定回数の要件の見直し

 前項の「算定要件が拡大」されたことに伴い、当該加算の「算定回数の要件」の見直しが行われることとなった。

 現時点、前々年度の3月からの2月までの間においてターミナルケアマネジメント加算の算定を「5回以上算定」することとしていました。よって今回「対象となる疾病が限定されなくなる」ことから、当然算定回数の要件を見直すこととになったのです。

利用者への説明義務についての変更

 令和3年度介護報酬改定において、ケアマネジメントの公正中立性の確保を図る観点から、事業者から利用者に対し、前6か月間に作成したケアプランにおける訪問介護・通所介護・地域密着型通所介護・福祉用具貸与の各サービスの「利用割合、同一事業者により提供された割合」について説明を義務づけていました。

 しかし【図3】のとおり、公正中立性の確保に関する取組について、「利用者への説明義務の有効性を感じない事業者」の割合は46.4%にも上っています。

 また、説明義務が重いにもかかわらず、かえって特定の事業所を選択することを助長している側面もあり、この説明義務の効果について疑問視される面があります。

よって、今回利用者に対する「説明義務を努力義務に改める」ことになります。

 

【図3】

出典:令和5年11月6日 第230回社会保障審議会介護給付費分科会(第230回)資料5  P26より引用

介護サービス情報公表制度について

 前項の「利用割合、同一事業者により提供された割合」について説明の義務づけを「努力義務」に改めることになりました。しかし、前6か月間に作成したケアプランにおけるサービスの利用割合等の介護サービス情報公表制度における公表の義務づけの取扱いについて、利用者が介護サービスや事業所・施設を比較・検討するための情報としては、引き続き公表することとなります。

特定事業所加算の要件の一部見直し

 ①事例検討会について

多様化・複雑化する課題に対応するための取組みを促進する観点からの特定事業所加算の要件における研修の範囲を見直すこととします。

(現在)地域包括支援センター等が実施する事例検討会等に参加していること。

  ↓

(変更)ヤングケアラー、障害者、生活困窮者、難病患者当、他制度に関する知識等に関する知識等に関する事例検討会、研修等に参加していること。

 ②当該加算の要件として運営基準減算の取扱いについて

 特定事業所加算の要件のうち、以下の事項につき、事業所における毎月の確認作業等の手間を軽減する観点から見直しを行います。現在、「居宅介護支援費に係る運営基準減算又は特定事業所集中減算の適用を受けていないこと」が要件となっていましたが、以下のとおり変更となります。

(現在)「運営基準減算」を受けていないこと(毎月の確認が必要であった)。

  ↓

(変更)「運営基準減算」については加算算定要件から除外する。

③当該加算の要件として特定事業所加算の取扱いについて

 居宅介護支援における公正中立性を担保する観点から、引き続き、特定事業所集中減算については、特定事業所加算の算定要件として残ることとなります。

事業所配置の主任介護支援専門員等の兼務

 居宅介護支援事業者が、介護予防支援の提供や地域包括支援センターの委託を受けて総合相談支援事業を行う場合に、これらの事業に従事することができるよう、兼務しても差し支えないものとします。

 また、今回の介護報酬改定では居宅介護支援費逓減制が緩和される。これにより特定事業所加算の利用者数の要件が緩和されることとなります(項目10.を参照)。

モニタリングにテレビ電話装置の活用

 今回の介護報酬改定において、少なくとも月1回(介護予防支援の場合は3月に1回)の訪問によるモニタリングを原則としつつ、一定の要件を設けたうえで、テレビ電話装置等を活用したモニタリングを行うことを可能とします。

 【モニタリングにテレビ電話装置を活用する場合の要件】

 ア 利用者の同意を得ること。

 イ サービス担当者会議等で主治医等から以下の同意が得られていること。

 ・利用者の状態が安定していること。
 ・利用者がテレビ電話装置等を介して意思表示できること。
 ・上記装置で収集できない情報は他事業者との連携により情報収集を行うこと。

   ⇒「情報連携シート等の一定の様式を用いた情報連携の仕組みを想定。

 ウ 少なくとも2月1回(介護予防支援の場合6月に1回)は利用者宅を訪問すること。

ケアプラン取扱い件数、配置員数見直し

 今回の介護報酬改定では、ケアマネージャーのケアプラン取扱い件数と配置員数の見直しを行います。

①居宅介護支援費(Ⅰ)

  現行の40件以上から逓減性が適用されているが、これを45件以上から適用とする。

②居宅介護支援費(Ⅱ)

  逓減性の適用を更に緩和し、現行の45件以上から逓減性が適用されているが、これを50件以上から適用とする(ケアプランデータ連携システム活用の要件が入る可能性があります)

③要支援者を担当した場合の取扱い件数【変更】

  現行では、要支援者の利用者に1/2を乗じているところ、改定により1/3を乗じることとする。

④ケアマネージャーの配置員数の見直し【変更】

  • (新)居宅介護支援費(Ⅰ)・・要介護の数に要支援者の数に1/3を乗じた数を加えた数が44又はその端数を増すごとに1とする。
  • (新)居宅介護支援費(Ⅱ)・・・要介護の数に要支援者の数に1/3を乗じた数を加えた数が49又はその端数を増すごとに1とする。

【図4】

出典:令和5年11月6日 第230回社会保障審議会介護給付費分科会(第230回)資料5  P56より引用

地域包括支援センターの業務負担軽減

 令和6年4月から居宅介護支援事業者も市町村からの指定を受けて介護予防支援を実施することができます。よって、以下の見直しが行われます。

①運営基準の見直し

 管理者を主任ケアマネージャーとすることやケアマネージャーのみの配置で事業を実施できるようにします。

 ⇒地域包括支援センターにおける配置人員は「保健師、社会福祉士、主任ケアマネージャー」。

②モニタリングにテレビ電話装置の活用

少なくとも6月に1回の訪問によるモニタリングを原則としつつ、一定の要件を設けたうえで、テレビ電話装置等を活用したモニタリングを行うことを可能とします。

同一建物居住の利用者に対するケアマネジメントの再評価

 今回、介護報酬は業務に要す手間・コストを評価するものであることから居宅介護支援においても、利用者が居宅介護支援事業所と併設・隣接するサービス付き高齢者向け住宅等に入居している場合、ケアマネージャーの業務実態を踏まえ評価を行うこととします。

【図5】

出典:令和5年11月6日 第230回社会保障審議会介護給付費分科会(第230回)資料5  P65より引用

上記【図5】のとおり、住宅型有料老人ホームでは28.5%、サービス付き高齢者向け住宅では32.3%について、居宅介護支援事業所が併設又は隣接しています。

また、この場合、当該事業所が同一建物居住の利用者にケアプラン作成している割合は64.1%に上る。よって、今回の介護報酬改定では「基本報酬を減算」、若しくは「集合住宅用の基本報酬を新設」のいずれかが適用される可能性が高いのです。

福祉用具貸与の運営基準改正

  現行、介護予防サービス等の運営基準では、以下の事項が定められています。

第278条の2 第5項 (介護予防福祉用具貸与計画の作成)

 福祉用具専門相談員は、介護予防福祉用具貸与計画に基づくサービス提供の開始時から、必要に応じ、当該介護予防福祉用具貸与計画の実施状況の把握を行うものとする(モニタリング゙)。

第278条の2 第6項(介護予防福祉用具貸与計画の作成)

 福祉用具専門相談員は、モニタリングの結果を記録し、当該記録を当該サービスの提供

に係る介護予防サービス計画を作成した指定介護予防支援事業者に報告しなければならない(報告)。

 上記2つの項目は、「介護予防福祉用具貸与」には存在しましたが、「福祉用具貸与」には存在していませんでした。つまり、介護予防福祉用具貸与と同様の取扱いに変更となります。

①モニタリングの実施時期につき、福祉用具貸与計画の記載事項に追加。
②モニタリング時に福祉用具の使用状況等を記録し、介護支援専門員に交付する。

まとめ

今回のブログでは、居宅介護支援について介護報酬改定における重要論点を挙げてみました。

居宅介護支援事業所では、ケアマネージャーの採用が非常に困難となっています。また、事業所としての運営が安定する視点からも、今回の介護報酬改定では業務が効率的となるよう配慮されているように思えます。

しかしながら、今回の介護報酬改定でおいても、抜本的な収益改善に繋がるような施策が施されませんでした。

こうしたことからも、今後、地域包括ケアにおいて中心的な役割を担うこととなる居宅介護支援事業所の運営の状況について、引き続き注視していきたいと思います。

今回もブログをお読みいただき、ありがとうございました。次回以降のブログもお楽しみに。

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