皆さん、こんにちは。元有料老人ホームの施設長を担当していた税理士・行政書士の山田勝義です。
前々回のブログでは、「令和6年度 介護サービス事業者の情報公表に関する義務には2種類あります!」としてブログを書きました。介護事業者の皆さんも、介護サービス事業者の情報公表に関する義務に以下の2種類あること、そして目的は理解できたと思います。
A 介護サービス事業者の「経営情報の調査及び分析等」
B 介護サービス情報公表制度における「財務状況の公表」
今回のブログでは、上記Bの話である「介護サービス情報公表制度(財務状況の公表)」の話をしたいと思います。前述のとおり介護サービス事業者の情報公表に関する義務は2種類あることや目的については前々回のブログに譲り、このブログでは「事業者が何を対応しなければならないのか」に焦点を当て、説明していきたいと思います。
では、早速次項からBの話を説明していきましょう(Aの話は前回のブログでご確認ください)。
今回の介護サービス情報公表制度における「財務状況の公表」の報告義務の根拠!
では、引き続き、Bの話、「介護サービス情報公表制度における(財務状況の公表)」を説明します。
この「介護サービス情報公表制度」は、介護保険法第115条の35に定められたものであり、介護サービス情報として報告すべき事項は、介護保険法施行規則第140条の47に定める「別表第一」と「別表第二」となっています。
今回の改正(令和6年4月1日)に伴い、前述の「別表第二」の「第二 介護サービスを提供する事業所又は施設の運営状況に関する事項」において、「イ 共通事項」として 「(4)事業所の財務状況」として事業所に新たに報告義務が課されました。
実は、この事業所の財務状況の公表報告については、社会福祉法と障害者総合支援法におけるサービス事業者に対しては、すでに報告義務が課されています。
今回、令和6年の介護保険法改正において、令和6年4月1日より「事業所の財務状況」として、新たに事業者に報告義務が課されることになりました。
「介護サービス情報公表制度における(財務状況の公表)」で事業者がやること!
本来ならば、丁寧に説明していくことが正しい説明方法かもしれません。しかし、事業者のみなさんは忙しいのです。「手っ取り早く知りたい!」というのが、みなさんの気持ちでしょう。
よって、分かりやすさを最優先し「事業者は何をしなければならないのか?」を、順番に説明します(①~⑦)。
【事業者がやること!】
①公表する財務諸表はどのような形態によるべきか?
結論は、現在まで事業者がおこなっている会計区分・会計処理方法に従い、公表する財務諸表、注意点に関する結論は以下とおりです。
・公表する財務諸表は「損益計算書」、「キャッシュフロー計算書」、「貸借対照表」とする。
・ 公表する財務諸表は、原則として、介護サービス事業所又は施設単位とする。
・ 上記について、拠点や法人単位での区分けが困難な事業所においては、拠点単位や法人単位での公表を可能とする。その際、公表対象が明確となるよう、当該会計に含まれている事業所又は施設を明記の必要がある。
②公表の単位
原則、介護サービス事業所・施設単位で行う。
拠点や法人単位での区分けが困難な事業所においては、拠点単位や法人単位での公表を可能とする。その際、公表対象が明確となるよう、当該会計に含まれている事業所又は施設を明記の必要がある。
③報告対象となる事業所・施設
原則、全ての介護サービスを対象。
④報告方法
財務諸表等の公表について、自社ホームページ等への掲載、介護サービス情報公表システムによる報告方法。
この事業者の「財務状況の公表」は、現時点どのレベルで良いのか?
前項では、「①公表する財務諸表はどのような形態によるべきか?」として、以下のとおり、示しました。
・公表する財務諸表は「損益計算書」、「キャッシュフロー計算書」、「貸借対照表」とする。
・公表する財務諸表は、原則として、介護サービス事業所又は施設単位とする。
・上記について、拠点や法人単位での区分けが困難な事業所においては、拠点単位や法人単位での公表を可能とする。その際、公表対象が明確となるよう、当該会計に含まれている事業所又は施設を明記の必要がある。
加えて、そもそも介護サービス事業所としての指定を受け、事業運営を行っているのであれば、事業者として当然、一定の会計区分・会計処理方法に従い処理を行っているはずです。そうであれば、現時点の事業者としては作成している財務諸表を公表すれば良いということです。
つまり、現時点、この「事業所等の財務状況」の報告義務を課されたことをもって、現在行っている「会計区分・会計処理方法」をわざわざ変更する必要は無いということです。
☞「事業所等の財務状況」の報告義務を課すにおいても、事業者として負担となるようなことは求めていません!
確かに、運営基準ではそれぞれの法人に適用される会計基準等によって作成された計算書類の数値を介護サービス事業別に算出、表示することを求めています。
そして、会計処理方法の仕組みは様々なものが考えられるが、法人の会計事務の負担を考慮しつつ、運営基準の求める内容を満たす「適切な会計処理方法の例」として以下の各方式を示しています。
「会計単位分割方式」
「本支店会計方式」
「部門補助科目方式」
「区分表方式」
確かに、財務諸表については、それぞれの法人に適用される会計基準と上記会計処理方法に従うことが原則です。
しかしながら、今回の介護保険法施行規則第140条の47に定める「別表第二」において、「事業所等の財務状況」として事業者に報告義務を課してはいるものの、この「事業所等の財務状況」の報告義務を課されたことをもってして、前述のとおり、わざわざ会計区分・会計処理方法を変える必要は無いと思います。
まとめ
こうした一連のブログを、なぜ書こうと思ったかというと、私のクライアントの運営指導での立会いにおいて、行政機関と事業者のやり取りの中で「介護サービス事業者の経営情報の調査及び分析等」の話と「介護サービス情報公表制度における財務状況の公表」の話が混在してしまっているようなやり取りを目にしたからでした。
これを受けて、私は「介護保険最新情報Vol.1297(令和6年8月2日)」に掲載されていた通知である「介護保険法第115条の44の2の規定に基づく介護サービス事業者経営情報の調査及び分析等に関する制度に係る実施上の留意事項について」を基礎として、今一度介護保険法、これに関する政令・省令・通知を細かく確認しました。
また、併せて他の方々のブログも確認しましたが、この論点に言及しているブログが存在しなかったのです。
こうしたことから前回のブログ「最新 令和6年度 介護サービス事業者の情報公表に関する義務を理解していますか?」を書きました。しかしながら、全てを盛り込もうとしたためブログとしては非常に長くなり、かつ内容が難しくなってしまいました。
よって、このブログを3回で分割し、今回のブログを含め「事業者は何をしなければならないのか」を意識して、分かりやすく説明を行うこととしました。
前々回のブログでは、「令和6年度 介護サービス事業者の情報公表に関する義務には2種類あります!」として、Aの話である「介護サービス事業者の経営情報及び分析等」と、Bの話である「介護サービス情報公表制度における財務状況の(財務状況の公表)」について、それぞれの目的を示しました。
また、今回のブログでは、現時点で、介護サービス事業者が行うべき介護サービス情報公表制度における「財務状況の公表」の在り方を記載しました。
なぜ、ここまで私が拘るのかというと、多くの介護事業者が、その制度趣旨の理解や取扱いを間違えてしまうことにより、「余計な仕事を増やしてしまうことを避ける」ということからです。
事業者として、法に基づきやるべきことをしっかりやって、無駄な負担となることはやめましょう!
今後も、このテーマにつきまして情報収集含め、しっかりと追っていこうと思いますので、引き続きブログを楽しみにしていてください。
最後まで、ブログをお読みいただき、誠にありがとうございました。