令和6年度介護報酬改定の内容が明らかとなり、私自身も介護報酬改定についてのセミナーを順次開催していますが、セミナーに使用する資料を作成し、またセミナー参加者からのご質問を通じて、自分自身も今回の介護報酬改定についての発見があるものです。
こうした中で、今回の介護報酬改定において「医療系サービス」について、事業者が取扱ううえでの注意しなければならない事項を見つけましたので、この点について本ブログにおいて明らかにします。
はじめに
令和6年度の報酬改定は、医療・介護・障害のトリプル改定でした。そう言ったところで、それぞれの分野での連携が見られた改定であったとも思えます。
特に、介護報酬改定に着目すると、介護報酬改定の時期について、大きく分けると「令和6年4月1日施行」と「令和6年6月1日施行」の部分に分かれます。
そこで、今回介護報酬改定が「令和6年6月1日施行」となる医療系サービスについて、事業者として特に注意しなければならない点をまとめてみます。
今回の介護報酬改定の施行時期について
今回の介護報酬改定の特徴は「概ねの改定時期が2回」となったことが大きな特徴となります。特に、令和6年度診療報酬改定が「令和6年6月1日施行」となったことの影響が大きかったのだと思います。
以下のとおり、改めて①~④の改定時期ごとに対応する項目を記載しますので、ご確認ください。
【施行時期】
① 令和6年6月1日施行とするサービス
・訪問看護
・訪問リハビリテーション
・居宅療養管理指導
・通所リハビリテーション
② 令和6年4月1日施行とするサービス
・上記以外のサービス
③ 令和6年8月1日施行とする事項
・基準費用額の見直し
④ 令和7年8月1日施行とする事項
・多床室の室料負担
介護報酬改定において「医療系サービス」において注意すべき点について(その1)
私自身、前項の内容を見ると単純に「医療系サービス」の改定時期は、「令和6年6月1日」に対応すればよいと思い込んでいました。
ところが基準を改めて確認したところ、たとえ医療系サービスであったとしても「令和6年4月1日に事業所として対応しなければならない事項があることが判明したのです。
根拠等は後回しとして、医療系サービスの事業所として令和6年4月1日に対応しなければならない事項で、主な事項は以下のとおりです。
① 業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入(告示改正)
② 高齢者虐待防止の推進(告示改正)
③ 身体的拘束等の適正化の推進(省令改正)
※居宅療養管理指導は③のみ。
つまり、①~③については「令和6年4月1日」からの適用となるということなのです。
ただし、実効的な話をすると、①については「令和7年3月31日(1年間)までの間は減算を適用しない」として経過期間適用が1年間あり、かつ③については令和6年4月1日からの適用であるものの、現時点事業所としての「減算の適用無し」なのです(「減算の適用無し」であっても事業所としての対応は当然必要です)。
そして特に要注意なのが、②の「高齢者虐待防止の推進」に関する取組は、「令和6年4月1日」適用であり、かつ「減算適用あり」なのです。
よって、事業所として令和6年4月初旬に指定権者に提出する「介護報酬における加算・減算の届出」については、当該項目について「基準型」若しくは「減算型」として届出が必要なのです。
つまり、令和6年5月1日に事業所に対し、行政機関による運営指導がなされた場合、事業所として「高齢者虐待防止に関する取組」がなされていなければ、指摘事項であり、かつ減算の取扱いがなされるということなのです。
こうしたことからも、医療系サービスの事業所について、上記①~③の取扱いについては十分注意することが必要なのです。
次項では、本項に挙げた事項についての基準等の根拠を明示します。
上記の医療系サービスであっても4月1日に対応が必要な根拠について
では、上記①~③について「令和6年6月1日」ではなく、医療系サービスでも「令和6年4月1日に事業所として対応しなければならない事項があると前述しました。
① 業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入(告示改正)
② 高齢者虐待防止の推進(告示改正)
③ 身体的拘束等の適正化の推進(省令改正)
※居宅療養管理指導は③のみ。
本項では、なぜ医療系サービスの事業所として令和6年4月1日に対応しなければならないのかということについて、以下のとおりその根拠を示したいと思います。
【根拠】——————————————————————————————-
【① 業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入(告示改正)】
【② 高齢者虐待防止の推進(告示改正)】
●指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日老企第36号 厚生省老人保健福祉局企画課長通知)
第2居宅サービス単位数表(訪問介護費から通所リハビリテーション費まで及び福祉用具貸与費に係る部分に限る。)に関する事項 4訪問看護費
(9)高齢者虐待防止措置未実施減算について
訪問介護と同様であるので、2(10)を参照されたい。
(10)業務継続計画未策定減算について
訪問介護と同様であるので、2(11)を参照されたい。
【コメント】→つまり、上記(9)(10)について、「訪問介護と同様であるので・・・。」との記載があるので、当該告示の取扱いは、訪問介護における介護報酬改定時期を援用し「令和6年4月1日」として対応することが必要であるということです。
【③ 身体的拘束等の適正化の推進(省令改正)】
●指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(平成11年9月17日老企第25号)
第3介護サービス 三訪問看護 3運営に関する基準
(3)指定訪問看護の基本取扱方針及び具体的取扱方針
④ 指定訪問看護の提供に当たっては、当該利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならず、緊急やむを得ない場合に身体的拘束等を行う場合にあっても、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならないこととしたものである。
また、緊急やむを得ない理由については、切迫性、非代替性及び一時性の3つの要件を満たすことについて、組織等としてこれらの要件の確認等の手続きを極めて慎重に行うこととし、その具体的な内容について記録しておくことが必要である。
なお、居宅基準第73条の2第2項の規定に基づき、当該記録は、2年間保存しなければならない。
【コメント】→つまり、上記についての記載がありますので、当該省令の取扱いは「令和6年4月1日」として対応することが必要であるということです。
介護報酬改定において「医療系サービス」において注意すべき点について(その2)
前項まで、医療系サービスであっても「令和6年6月1日」ではなく、「令和6年4月1日に事業所として対応しなければならない事項をまとめました。
この他にも同様に「令和6年4月1日」に変更で、事業所として対応しなければならない事項をご説明します。
① 「地域区分」についての変更
今回、この「地域区分」についての変更も「医療系サービス」に該当するサービスであっても、「令和6年4月1日」からの適用となるということです。
これは地域区分に変更が生じる箇所、つまり令和6年度から現行の級地から変更がある自治体は、以下【表1】のとおり、全国で38自治体ということとなります。
利用者に対するご説明で以下の事項が必要となるということです。
【利用者へのご説明の参考例】
医療系サービスの介護報酬改定につきましては、原則「令和6年6月1日」ということとなります。しかし、今回、ご利用者様の該当する保険者(市町村)については、地域区分の変更があったことに伴い、令和6年4月1日に1単位あたりの単価が変更することなりました。これに伴い、ご利用者様の介護保険をご利用いただく負担金額に変化が生じます。
【表1】
まとめ
私自身、介護報酬改定のこのような形で資料をまとめながらセミナーを開催することを始めたのが2009年(平成21年)のことでした。それから15年間、介護報酬改定も5回に渡り経験してきました。
また、今回のように介護報酬の時期が「概ね2回」に分けて実施されたことが初めてでした。手探りと現在までの感覚を手繰り寄せながら令和6年度の介護報酬改定の準備をしてきました。
しかし、今回の介護報酬改定において、セミナーを開催・資料作成、セミナー参加者からのご質問を通じて、自分が取り違えていることを見つけました。
今回は「医療系サービス」について、事業者が取扱ううえでの注意しなければならない事項としてまとめてみました。
引き続き、今回の介護報酬改定手当てをする中でブログの皆さんにお伝えしたほうが良いと思われる有用な情報を、今後も発信していこう考えております。
今回もブログをお読みいただき、誠にありがとうございました。次回もお楽しみに。