介護保険事業者の行政処分の流れについて解説!

行政処分(返戻・指定取消・連座制)

令和5年4月10日に群馬県より公示された介護保険事業者に対する「指定の取消し」という行政処分が3件出されました。
この事業者の指定の取消し理由について共通の傾向がありましたので、その処分の具体的理由を中心に表したいと思います。

私も様々な指定の取消事例を確認してきましたが、以下のレベルの事業所の運営状態であるならば、まず指定の取消の行政処分は免れないものと思われます。

行政処分を受ける上記3件の共通の傾向

以下に今回行政処分を受ける事業者の共通の傾向を取上げてみます。

  1. いずれの事業所の指定を受けてから2年以内の居宅サービス事業者であること
  2. いずれの事業所も同一市内で事業運営していること
  3. 行政処分の理由がいずれも「不正請求」・「虚偽報告」・「不正不当」が絡んでいること

行政機関によっては、開業して1年以内に運営指導が執り行われることがあります。
これは、開業して間もない時期に個別指導を行うことにより、早期に、かつ適切な事業運営を指導することができるという目的から行われているのであると思います。

しかし、上記のとおり事業所を開業して2年以内という時期であるにも関わらず、行政処分の理由がいずれも介護保険法第77条第1項各号に反する内容であり、明らかに個別指導を行い、事業者を指導する範囲を逸脱しているものと思われる。

また、これは私の憶測でしかないが、事業所が同一市内での事業運営であり、事業指定の年月日も近傍、かつ処分の理由も非常に似通っていることからも、何らかの関係性があった可能性があるのではないであろうか。

事業者が行政処分を受けた理由を確認する

ここからは、行政処分を受ける3件の事業者のうち、一番処分が重い事業者について、その処分の内容等を表していきたいと思います。
今回、この事業者は介護保険法第77条1項各号により当該事業者は、指定取消処分を受けることとなりましたが、その具体的な原因は以下のとおりです。

指定取消処分の具体的な理由

不正請求(介護保険法第77条第1項第6号該当)

  • 基本報酬
    指定訪問介護によるサービス提供を行っていないにもかかわらず、虚偽のサービス提供記録を作成し、介護給付費を不正に請求、受領した。
    サービスの実態とは異なる訪問介護員、サービス内容、提供時間等を記入した虚偽の訪問介護サービス提供記録を基に介護給付費を不正に請求、受領した。
  • 特定事業所加算Ⅰ
    当該加算の算定要件を満たさないことを知りながら、加算を請求、受領した。
  • 介護職員処遇改善加算
    当該事業所の職員ではない者に支給したほか、支給額が当該加算として受領した額を上回っていないにもかかわらず、上回ったとする実績報告を提出し、介護給付費を不正に請求、受領した。

虚偽報告(介護保険法第77条第1項第7号該当)

  • 県の監査開始後、訪問介護に従事していない職員について、事実と異なる「出勤簿」及び「シフト表」を作成し、県に提出した
  • 前管理者兼サービス提供責任者の出勤簿について、正規のもののほか、虚偽のものを作成しており、県には、当該出勤簿を提出した

不正不当(介護保険法第77条第1項第11号該当)

  • 訪問介護に従事していない職員について、訪問介護員として全く勤務していないにもかかわらず、利用者に対して訪問介護サービスを提供していたとする虚偽の「サービス提供記録」を作成した
  • サービス提供を行っていないにもかかわらず、虚偽のサービス提供記録などを作成した
  • 令和4年1月から令和4年3月までに管理者兼サービス提供責任者であった職員について、事実と異なる虚偽の出勤簿を作成し、また、当該期間、特定事業所加算の算定要件にあるサービス提供責任者から指示があったとして、虚偽の「サービス提供責任者からの指示書」を作成し、特定事業所加算を不正に受給した

行政処分の内容を確認する

今回の行政処分の理由を見ると、上記のとおり運営する訪問介護事業所においてその不適切な事例が発生していたことから当該事業所は指定取消処分となりました。
事業所の指定取消に伴い、効力発生日(令和5年4月10日)以降について、当該事業所において介護保険によるサービス提供を行うことはできなくなりました。

また、事業所を開設してから1年3カ月分の介護報酬を不正請求金額と認定された。ここで介護報酬返還に伴い、介護保険法第22条第3項による不正利得による追徴を課されると仮定すると、事業者の返還金額の総額は7,000万円をゆうに超えることとなってしまうのです。

  1. ①訪問介護事業所・・・指定の取消(効力発生日令和5年4月10日)
  2. ②不正請求額(概算)・・・\51,598,354円
    (不正請求期間 令和3年6月分~令和4年9月分、特定事業所加算Ⅰの算定のみ
    令和3年10月分~令和4年9月分)

行政処分の内容及び法的根拠(抜粋)

群馬県は、介護保険法第77条第1項の規定に基づき、令和5年4月10日付けで下記のとおり指定居宅サービス事業者の指定取消の行政処分を行いました。

  1. ①事業種別
    訪問介護事業所(令和3年6月1日指定)
  2. ②処分内容
    指定取消(令和5年4月10日)

【法的根拠】

  • 介護保険法第77条第1項第6号
    居宅介護サービス費の請求に関し不正があったとき。
  • 介護保険法第77条第1項第7号
    指定居宅サービス事業者が、第76条第1項の規定により報告又は帳簿書類の提出若しくは提示を命ぜられてこれに従わず、又は虚偽の報告をしたとき。
  • 介護保険法第77条第1項第11号
    全各号に掲げる場合のほか、指定居宅サービス事業者が居宅サービス等に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき。

【出典】令和5年4月10日 介護保険事業者の行政処分について(群馬県)

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