運営指導における返戻と監査における徴収金について

運営指導、監査、立入検査

事業所が介護保険事業を行うということは、介護サービスを提供して介護報酬を得ることです。この介護報酬を請求するために事業所は、国民健康保険連合会(以下、「国保連」という)に請求し、そのうえで請求した月の翌々月に介護報酬は事業所に支払われる形となっています。

この基本的な請求の流れは、事業所としてそれこそ毎月行っている手続きなので、分からないことはないと思います。

反面、これが運営指導や監査を原因として事業所が介護報酬を返戻しなければならないとなると、この返戻は頻繁に起こるものではないので迷うことが多いと思います。

私自身も運営指導や監査を受けて、大きな返戻手続きや処理を行った経験がありますのでその時の実際の経験をこの場でお伝えします。

過誤申立とは何か

運営指導や監査を受けて、まず国保連に対し事業所から送付済みの介護保険給付費請求データの取下げを行う必要があり、この手続きを過誤申立と言います。

つまり、返戻を行うために、これに先立ち、事業者は国保連に対し過誤申立手続きを行い、事業所側が受け取った介護保険給付費を各保険者に返還することが必要なのです。

ここで注意しなければならないのは、この過誤申立手続きは、この介護保険給付費についての請求を「取消」するのみの行為なので、併せて事業所は修正後の介護保険給付費について再請求をすることが必要です

同月過誤と通常過誤とは何か

過誤申立には以下の2種類が存在します。

  1. 通常過誤
  2. 同月過誤

通常過誤とは、「国保連での過誤処理を行った翌月以降に事業所の介護保険給付費の再請求を行う方法」です。
つまり、過誤処理を行った月と介護保険給付費の再請求を行う月がズレますので、当然相殺処理をすることはできません。

同月過誤とは、「国保連での過誤処理と事業所の介護保険給付費の再請求を同月に行う方法」です。
つまり、国保連での取下げと介護保険給付費の再請求を同じ月に処理を行うことができることから同月過誤という名称となっています。

この同月処理によることで相殺可能になるという仕組みになっているのです。
通常過誤と同月過誤のとおり、確かに過誤申立は2種類があるのですが、一般的には「通常過誤」が原則であると言われています。

つまり、行政機関(保険者)によっては過誤申立の手続きを行った場合、特に指定等が無い場合、「通常過誤」により処理することが必要となります。

以下に、この通常過誤と同月過誤の相違点をまとめたいと思います。

ア 同じ点・・・どちらも介護保険給付費についての請求を取下げる行為

イ 違う点・・・介護保険給付費について同月過誤は相殺が可能、通常過誤は相殺ができない。つまり、「取下げのタイミング」が違うこと

通常過誤と同月過誤の時間の流れ、単位の動き

通常過誤や同月過誤と言っても「時間の流れ」や「単位の動き」が分かりにくいと思いますので、ここで具体例を提示したいと思います。

①通常過誤

ア 時間の流れ(4月を通常過誤)

ⅰ 4月10日請求分については通常過誤不可(5月に行う)

※理由⇒国保連審査が未決のため

ⅱ 保険者に「通常過誤」の申立書を提出(5月15日頃)

ⅱ 保険者から国保連へ通常過誤データの提供(5月20日頃)

ⅲ 国保連で過誤処理(5月下旬)

ⅳ 国保連より過誤決定通知が届く

ⅳ 過誤決定通知に基づき事業所が再請求を行う(6月10日頃)

イ 単位の動き

【前提】

4月請求分:請求取下げ単位数1000単位、正しい請求単位数1500単位の場合

【単位の動き】

ⅰ 5月: ▲1000単位

ⅱ 7月:   1500単位

②同月過誤

ア 時間の流れ(4月を同月過誤)

ⅰ 保険者に「同月過誤」の申立書を提出(4月締切日)

ⅱ 保険者から国保連へ同月過誤データの提供(5月初旬)

ⅲ 事業所が再請求を行う(5月10日頃)★通知がないので要注意!

ⅳ 国保連での過誤処理と請求審査手続き(5月中)

イ 単位の動き

【前提】

4月請求分:請求取下げ単位数1000単位、正しい請求単位数1500単位の場合

【単位の動き】

ⅰ 4月請求:   0単位(同月過誤申立のため、4月分は5月審査へ)

ⅱ 6月支払:  500単位(1500単位-1000単位)

事業者にとっての通常過誤と同月過誤のメリットとデメリットとは

運営指導や監査で返戻となる場合であっても、事業所にとって「通常過誤」と「同月過誤」のどちらを採用するのかは、「資金繰り」や「事業所としての手間」を考えるうえで、非常に重要なマネジメントであると私は考えます。

そう言った意味で、ここで通常過誤と同月過誤のメリットとデメリットを提示し、実際に事業所が返戻を行わなければならない場合、その金額の大きさやタイミングに応じて、いずれかの過誤手続きによることが非常に重要であると思います。

①通常過誤のメリットとデメリット

メリット
  • 再請求のタイミングで国保連から過誤決定通知書が届くので請求忘れが起こりにくい
  • 過誤申立と再請求(過誤決定通知書受領後)のタイミングが異なり時間的余裕がある
  • 過誤の原則的な方法である
デメリット
  • 介護保険給付費の過誤と再請求月がズレるので相殺はできない
  • 当月審査で請求した請求は通常過誤での取下げはできない
  • 相殺ができないが故に事業所のキャッシュ変化が大きくなる

②同月過誤のメリットとデメリット

メリット
  • 介護保険給付費を同月処理で相殺できる
  • 相殺できるが故に事業所のキャッシュ変化を抑えることが可能
  • 当月審査で請求した請求はでも取下げができる
デメリット
  • 再請求のタイミングを間違えると相殺ができなくなる恐れがある
  • 再請求のタイミングで国保連から過誤決定通知書から届かない
  • 手続き期間が非常にタイトである
  • 行政機関(保険者)によって取扱わない場合がある

上記のとおり、同じ返戻手続きであっても、通常過誤を採用するのか、また同月過誤を採用するのか、おのおのの特性を把握し、事業所としてしっかり対応したいものです。

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