無予告指導における当日の流れについて

運営指導、監査、立入検査

通常の運営指導の場合

運営指導も心配であるが、無予告指導という言葉を聞くようになりました。

ここでは、まず、そもそも運営指導についての説明をさせていただき、この後、無予告指導とはどのようなものか、私の実例を元に説明をしたいと思います。

運営指導の形態

運営指導は、厚生労働省から出された介護保険施設等指導指針及び介護保険施設等運営指導マニュアルに則り、その指導が行われています。

都道府県又は市町村が主体となり、都道府県又は市町村がその指定、許可の権限を持つ全ての介護保険施設等を対象に、計画的、かつ個別に原則事業所への実地により行われるものです。

運営指導には、自治体が単独で行う一般指導と言う形態と、厚生労働省及び都道府県又は市町村、都道府県及び市町村が合同で行う合同指導と言う形態があります。

通常、運営指導が実施される場合、事業所に対してあらかじめ文書により通知されるのが原則です。このため行政機関より事務所宛てに1カ月程度前に運営指導実施についての事前通知が送付されます。

運営指導の位置づけとは

運営指導について簡単に説明すると、介護保険法第23条及び第24条に基づき、当該保険施設等の対し、自治体が単独で実施頻度や個別事由を勘案し、毎年度、計画的に実施されるものを言います。

この運営指導は、原則介護保険施設等の関係者から関係書類等を基に説明を求め、「面談形式」により行われます。

介護保険法第23条又は第24条に基づく権限は、あくまでも行政機関が情報の収集を行うために行うものです。

つまり、これらの権限は、行政機関が介護保険施設等に情報を出すように求める性質のものですから、行政機関は、必要な情報を保持する介護保険施設等側から関係書類等の提出を受けるとともに、事業の運営状況や法令等への適合状況について介護保険施設側の関係者から説明を受けることになります。

つまり、運営指導の権限は、「行政機関自身が検査するという立入検査ではない」ため、介護保険施設等からの説明により、その「内容の確認を行う」という形になるのです。

無予告指導とは何か

無予告指導とは、どのようなものか。私が実際に経験した実例から、これについて説明をしていきたいと思います。

無予告指導とはどのようなものか

無予告指導とは、前述した一般的な運営指導の場合と異なり、事業所に対してあらかじめ運営指導を実施する旨、通知されないのが原則です。

そうすると運営指導と無予告指導との違いは、事業者側に「事前に通知があるか否か」だけではないかとも思えますが、この無予告通知は入居者等に対する虐待等が疑われるような場合に緊急性を持って行われる指導がこれに当たるのです。

この無予告指導が行われるにあたり、まず行政機関に何らかの情報が入り、その事実について、まずは行政機関として早急に事実確認することが必要となります。

つまり、この事実確認こそが「無予告指導」なのです。

では、一般的な話では、分かりにくいので無予告指導の実際の体験談を次にお伝えしたいと思います。

無予告指導当日はどのような状況であったか

今回、無予告指導を実際に経験しました施設は、A市にて住宅型有料老人ホームを運営している事業者であり、併設する事業所は居宅介護支援事業所と訪問介護事業所を運営しています。

ある朝、施設に打合せのために伺ったところ、この施設に、突然車3台に分乗したA市役所介護指導課職員が6名の訪問を受けました。
実際に、朝礼前であり多数の職員が集合していたところに、いきなり複数のスーツ姿のA市役所職員が訪問してきたことに、現場職員は騒然となりました。

私が玄関に出迎え、A市役所職員の対応したところ、そのうちの1名から以下のような言葉を突き付けられるとともに通知を手渡されたのです。

「外部からの通報に基づき、これより事業所に対し、運営指導を実施します。」

私は、そのA市役所職員に対し、外部からの通報内容とは何かと確認したところ、その内容は明確には回答しないのです。
そして当該職員は、問答無用で、以下の指導・確認を行うので、速やかに準備するように以下の指示がありました。

  1. 記録の確認
  2. 本日出勤の現場職員全員との面談

記録の確認で指示された書類は、老人ホームでの施設記録、居宅介護支援事業所のケアプランや支援経過、訪問介護事業所における訪問介護計画書やサービス提供記録等です。

本日出勤の現場職員全員との面談については、別室を用意、2~3人単位で面談を行っていくとの話でした。

私は、朝からいきなり実施された無予告指導における現場職員の負担感を考え、面談の場に同席したい旨、A市役所職員に申し入れを行いましたが、これについては謝絶されたのです。よって、記録の確認の場に同席することにしたのです。

そして、ここで無予告指導の実施にあたり、A市役所職員に少し時間をもらい、動揺する現場職員に、私の口から以下のような話をしました。

「本日、市役所職員がみえて今から指導が行われることになったが、皆さんは何も不安がる必要はないので、自分が知っていることを素直に伝えてください。」

無予告指導がなされるにあたり、現場職員に何が起こっているのか情報伝え、そのうえでしっかりと説明をしなければ、心にわだかまりが残ってしまうこともあるでしょう。
この情報共有と説明は行う必要があると私は思います。

無予告指導を実際に受けてみて

実際にこの指導は、午前9時30分~午後3時30分頃まで行われました。私は記録の確認の場に同席していたので、あることに気づきました。

入居者や利用者から数名ピックアップしての調査でしたが、その書類での質問の内容がある入居者に随分と偏っているなと感じていました。

この指導が終了した際、一般の運営指導のような講評は無く、A市役所職員から私に以下のような話がありました。

「本日の指導において、書類の確認、そして職員の皆さんからの概ね適切に施設・事業所運営できていることが分かりました。反面、入居者に対する虐待を疑られるような言動・行動には注意してください。」

この言葉からすると、つまり外部からの通報内容の内容は、恐らく「この施設では虐待が行われているのではないか。」ということであったのではないかと思いました。

今回は、行政機関における虐待の有無についての事実を確認するための無予告申告であったのでしょう。

そして、このような形で「無予告指導」を実際に体験した者が、このようなブログを書いているケースはあまり無いものと思います。

これからも当日、事業所に対してなされる無予告調査は増えていくのかもしれません。

そう言った意味でも、日々の事業所の記録作成を適切に行うなど、介護保険制度により事業を行う者にとって、適切な事業運営が行うことが必要不可欠であると思います。

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