お客様から苦情を受ける体制や組織的手順を決めていますか?

苦情対応の参謀

皆さん、こんにちは。

元老人ホームの施設長を担当していた税理士・行政書士の山田勝義です。

さて、今回のブログでは「お客様から苦情を受ける組織的手順を決めていますか?」という題名で話を書き進めたいと思います。

お客様から苦情を受けた場合、その時たまたま苦情を受けた担当者任せにしておくと、その苦情の話が大きくなってしまったような経験がありませんか。このようになってしまうと、その担当者の精神的負担も大きなものとなりますし、そもそも苦情解決への道のりが遠くになってしまうものです。

やはり、担当者任せではなく、予め苦情を解決する窓口、手順を決めておくことが大切なのです。今回のブログでは、こうしたお客様から苦情を受ける組織的手順の話をしようと思います。

なお、今回のブログを書き始める前に一部変更点をお伝えしたいと思います。

実は、前回のブログまでは、苦情伝える対象を「利用者やご家族」と表現してきましたが、今後は「お客様」と表現しようと思います。その理由は、当初このブログは、私がコンサルタントを行っている「医療・介護・障害」の分野の事業者に対しての苦情対応を想定してブログを書き始めました。しかし、このブログをお読みいただいた方々から、「この苦情対応についてはサービス業にも参考になる」という意見を頂きました。

こうしたことから、苦情を伝える対象を「利用者やご家族」と限定するよりも、広く「お客様」と表現したほうが良いと思い、この度変更しましたのでよろしくお願いいたします。

一番最初にお客様から苦情を受けるのは誰?

一般的にお客様から最初に苦情を受けるのは、お客様に直接接する窓口を担当している職員、若しくはお客様にサービスを提供している職員であることが多いのだと思います。

そして、この苦情は、この職員が以下に該当するか否かによって、その対応方法が変わるのです。

上記のとおり、「お客様の苦情の対象は誰なのか」をよく見極めずに、「担当者なのだから対応して」というように、簡単に言う管理者が見受けられますが、これは本当に無責任であると思います。

なぜなら、そもそもその職員自身がお客様の苦情の対象となっているのであれば、すでにお客様の不信感が大きくなっている状況にあることを想像ができます。

この状態で当該職員に苦情対応を継続させると、お客様からすると「当該職員の説明内容がいくら適切なものであっても、理解を得ることは困難となる」でしょう。そして、この状況が続くと、この苦情は当該職員に止まらず、事業所や組織全体に対する、更に大きな苦情に発展することでしょう。

また、このお客様から苦情を受けている職員の精神的負担も非常に大きなものとなるはずなのです。

 こうしたことから、お客様に「苦情」を伝えられている職員自身がお客様の「苦情の対象」であるか否かを見極め、これに該当するのであれば、速やかに当該職員から、他の職員、若しくは管理者がお客様の苦情対応を行うよう対応するようにしましょう。

苦情を受ける体制や組織としての準備・対応をしていますか?

前項では、お客様から最初に苦情を受けるのは、お客様に直接接する窓口を担当している職員、若しくはお客様にサービスを提供している職員であることが多いのではと言いました。

このようにお客様から最初に苦情を受けるのは誰かということは非常に想定しにくいものです。しかしながら予め組織として苦情を受ける組織づくりを準備しておくことは必須です。

そこで本項では、この苦情を受ける体制や組織としての準備について書きたいと思います。

事業者側からすると、お客様からどのような形で苦情を受けるのかということは想定しにくいものです。もちろん、お客様が直接、事業所に苦情を伝える場合もあることでしょう。しかし、お客様からの苦情の有無を問わず、予め「苦情についてお客様の話を拝聴する部署を設置しておく(苦情対応担当窓口)」ことは企業姿勢として非常に大切なのです。

このような部署を企業として設置しているということは、お客様の苦情に向き合う企業姿勢を表していると言って過言ではないと思います。また、このような部署が無いと、お客様からすると、その都度、職員に直接伝える他にないということにもなってしまいます。

上記の苦情対応担当窓口の大きな目的は以下のとおりです。

 ちなみに、介護サービスの事業所で苦情が発生する場合を挙げてみます。

そもそも介護事業では、指定権者に事業所開設の届出を行うにあたり、事業者の苦情対応担当窓口や行政担当窓口を記載することが求められています。

確かに、事業者の運営会社における苦情対応担当窓口と言うと、あたかも苦情の対象となった一方の当事者による対応ということで中立でないとも思えてしまいます。しかし、苦情対応担当の担当者は、苦情を受ける当事者では無いという「第三者的な立ち位置」でお客様の苦情を聴くことからも、組織としての苦情に対する「事実確認」と「客観的な判断」を行うために有用なのです。

また、苦情を伝えるお客様としても、その苦情の内容が「自分の親が受けている介護サービス」についての場合、実際に介護サービスを提供している介護職員に「直接苦情を伝える」ことは言いにくいのではないでしょうか。その理由として、日頃より自分の親の介護サービスを提供してもらっている介護職員に対して、「苦情という感情(不満)を持ちつつ、反面お世話になっているという感情も併せ持っていること」なのだと思います。

よって、このように苦情対応担当窓口を予め設置しておくことで、お客様は落ち着いた気持ちの中で、自分の苦情を伝えることができることでしょう。

なお、苦情対応の組織体制とその手順が機能するためには、以下のように予めお客様に組織体制等を明示しておくが必須です。

 上記とおり組織体制等を予め明示、お客様からの苦情を苦情対応担当者が対応することにより、実際に苦情が生じた場合であっても、直接介護サービスを担う職員の精神的負担感を軽減することができるのです。

このように組織として、この苦情を苦情対応担当者が適切に対応することは、苦情を適切に解決することができる可能性が高くなります。

また、苦情対応担当者が、お客様からの苦情を客観的に受けることを通じ、「苦情の原因」、「苦情の対応」、「苦情の解決手順」等、データベース化すること等により、組織としての苦情対応のナレッジの蓄積・共有、そしてこれを運営能力向上の原動力とすることができることでしょう。

小規模の事業者ほど「苦情」の対応には注意が必要です

本項では、小規模の事業者という括りでブログを書きたいと思います。前提として、私は、一般的にお客様から最初に苦情を受けるのは、お客様に直接接する窓口を担当している職員、若しくはお客様にサービスを提供している職員であることが多いと述べました。加えてこの苦情について、以下に該当するか否かによって対応方法が変わるとも述べました。

つまり、ある程度の企業規模であるならば、コンプライアンス部門や法務部門が配置され、社内人材による判断により、適切な対応が取られることが想定されます。しかし、これが小規模の事業者であると「担当者と管理者が同じ苦情の対象」というような事象が起こることも多く、場合によっては当該管理者が苦情の一方の当事者となってしまい、苦情を申し立てているお客様の理解を得ることが困難となってしまう場合が多いものです。

こうした状況を避けるためにも、当該企業の本部等に、予め苦情対応担当者である部署や担当者を配置しておくことが必要なのです。

また、実際に上記のような配置が困難ならば、次項のように苦情に対する外部の専門家を活用することもひとつの方法であると思います。

場合によっては「苦情」に対する外部の専門家を活用することも必要です

前項まで、苦情に対応するにあたり組織内での一般的な対応を記載してきました。実は、この苦情その業界における「苦情の特性」があるものです。その会社の内部で苦情を対応しようとすると、その社内での現在までの経験に基づき、判断することとなるでしょう。

確かに、コンプライアンス部門や法務部門を有する「それなりの企業規模の会社」であれば、こうした知見の積み重ねや社内人材による判断により、苦情に対する的確な解決処理の道筋を立てることも可能でしょう。しかし、こうした部署や社内人材の知見や経験が無いと、苦情に対し的確に対応・解決を行うことが困難となることも多いものです。

こうしたことから、「苦情」に対する外部の専門家を活用することも検討することが有用です。

では、この「外部の専門家」の活用と言いますが、果たしてどのような専門家が良いのでしょうか。ただ、私自身も士業ですが、まず事業者の皆さんが外部の専門家を選ぶにあたり「ただ士業であることのみをもって選ぶ」ということは全く違うと思います。

★外部の専門家の条件

①自分の事業(医療・介護・障害)について法律的、行政的に知見のある専門家

②「苦情」、「事故」対応や行政対応に対する豊富な経験と解決事例を有する専門家

③自分の事業(医療・介護・障害)について、豊富な顧客を有し、「苦情」、「事故」に対する他社解決事例を基礎とし、的確に解決に導くことができる能力を有する専門家

 私自身、士業(税理士・行政書士)ではありますが、行政機関の法制担当としての経験、また、医療・介護・障害に対する豊富な顧客、これに基づく経験により、こうした外部専門家として問題解決の要請を受ける機会があります。

 しかしながら、こうした問題解決の要請を事業者の方々から受けた場合でも、よくよく内容を確認したうえで、自分が専門職業家として事業者のご期待に沿えないような場合には、その理由を明確にお伝えし、謝絶する場合もあります。

 つまり、「外部の専門家」を活用するにしても、何でもかんでも受ける「外部の専門家」である場合には、よくよく取引には注意が必要であると思います。

まとめ

今回のブログのテーマは「お客様から苦情を受ける体制や組織的手順を決めていますか?」としてブログを書いてみました。

 「苦情」というと、マイナスイメージが強く思われてしまう側面があり、つい「受けてしまった担当者は運が悪い」と思われてしまうことがないでしょうか。つまり、このように苦情に対して「逃げの姿勢」で対応していると、「真の苦情解決」は困難でしょう。

こうしたことからも、予め「苦情についてお客様の話を拝聴する部署を設置しておく(苦情対応担当窓口)」ことは企業姿勢として非常に大切なのです。

また、このような部署を企業として設置することは、お客様の苦情に向き合う企業姿勢を表していると言えるのです。

加えて「苦情が解決すれば良い」と、そのポイントで留まることも如何かと思います。「真の苦情解決」とは、苦情に向き合うことを通じて、企業として客観的に「苦情の原因」、「苦情の対応」、「苦情の解決手順」等を活用する等により、組織としての苦情対応のナレッジの蓄積・共有、そしてこれを運営能力向上として活用することなのだと思います。

今回もブログをお読みいただき、ありがとうございました。引き続き事例等を交えながら「苦情」について、深掘りしたブログを書いていこうと思います。 それでは次回のブログもお楽しみに。

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