皆さん、こんにちは。
有料老人ホーム、サ高住で施設長を担当していた税理士・行政書士の山田勝義です。
さて、今回のブログでは「「利用者が窒息した」重大事故発生時の手順・対応を確認していますか?」という題名で話を書き進めたいと思います。
つい、先日も私のお客様が運営される施設において、利用者が食事中に「食事を詰まらせ救急搬送した」とのご連絡をいただきました。 私の事務所では、お客様の対応等の緊急時「24時間、365日応答する」ことにしておりますので、速やかに施設長等に手順・対応方法を指示しました。
平行する形で施設長と連携を取り、利用者の方の適切な処置、その後の医療機関との連携、ご家族対応、行政対応等を含め、日頃より私が指導している手順・対応を確認しました。本件では、この利用者に対する施設側の対応が「早急、かつ極めて適切」であったため、当該利用者は幸いにも、命を取り留めることができました。
しかし、仮にこうした重大事故が発生した場合、これらのように施設側として適切な手順や対応方法が決められておらず、また職員が適切な対応ができなかったとしたなら、こうした結果にはならなかったかもしれません。
また、この結果が利用者の死亡を含む重大事故に派生し、かつ施設側が適切な対応ができていなかったとすると、当然訴訟に発展するケースもあるでしょう。
こうしたことから、今回のブログでは、施設側として注意を払っていたとしても発生してしまう重大事故において、施設側で行うべき手順・対応方法を確認したいと思います。
介護サービス中における「重大事故」とは
ここで言う 介護サービス中における重大事故とは、主に入居者が「死亡」、「骨折等の入院を伴う負傷」、「誤嚥・誤飲」、「感染症・食中毒」、「誤薬」等を被った事象を指します。
介護サービス中における「重大事故」が発生する場面とは
私の経験上、介護サービスを行う中で、重大事故が発生する可能性が高い場面は以下の場面が多いのではないかと思います。
①食事中の「窒息死」
②入浴中の「溺死」
③移動中の「転倒による頭部打撲」、「転倒による骨折」
④与薬の際の「誤薬」
これは、事実、以前勤務していた高齢者施設の運営会社で、事故発生の状況把握とデータを確認した際、上記①~④の介護サービスを行っている場合に、このような重大事故が発生しているのです。
また、③の転倒については、以下の時間帯に発生するケースが多いのです。
・夜間に利用者が居室においてベッドから降りる、もしくは移動しようとした場合
・夕方に通路等にて転倒する場合(夕方は足元が見にくくなるため)
つまり、 施設の職員に「こうした介護サービスを行っている場合、もしくは時間帯に重大事故が発生しやすいとあらかじめ理解させておくこと」は、施設運営において、重大事故を回避するうえで非常に重要なのです。
「利用者が窒息した」事故発生後の対応(「死亡」の場合)※事故発生当日
※事故発生当日
今回のブログでは、施設運営において「利用者が窒息した」という重大事故が発生した場合を想定し、かつ不幸にも利用者が死亡した場合を想定し、手順・対応を以下に示してみようと思います。
本項、また次項以下についての手順・対応について、皆さんが運営されている施設ではしっかりと対応することができていますか。仮に、対応することができていないようでしたら、すぐに対応するようにしましょう。
まず、本項では施設側として「事故発生当日」に対応すべき事項を示します。
★事故発生当日の手順(①~⑪)
①事故発生(「食事中の窒息とする」)
②周囲の職員に事故発生の事実を伝え、応援要請
③応急処置、救急搬送の連絡
コメント☞ 「タッピング、ハイムリック法、吸引(掃除機)、AED、胸骨圧迫」。これらを日頃から用意し、扱う訓練をしていますか?
④コンプライアンス部門、上長に至急連絡
⑤家族へ連絡
コメント☞客観的な事実のみ伝えること
⑥救急隊到着、蘇生処置
⑦当該利用者の「診療情報」、「保険証」を用意し、救急車に同乗、病院へ
⑧医師による当該利用者の「死亡確認」
⑨警察による事情聴取、現場検証
⑩事故発生「時系列」資料を作成
コメント☞関係者に確認しつつ早急に作成(担当者名を必ず入れること)
⑪社内情報共有
「利用者が窒息した」事故発生後の対応(「死亡」の場合)※事故発生翌日
※事故発生翌日
前項では、施設側として「事故発生当日」の対応を示しました。本項では、「事故発生翌日」に対応すべき事項を示します。
★事故発生翌日の手順(①~⑨)
①事故発生状況の確認(食事の場合、食形態や介助の状況)
②入居者の既往症、服薬、介護度等の確認
③「事故発生当日」にまとめた「時系列」資料に基づき確認
④施設として手順・対応が適切に行えたのか論点整理
コメント☞必ず関係者が「直接」集まり確認すること
⑤警察での聴き取り、刑事上の問題に派生する可能性の検討
⑥ご家族の反応、民事上の問題に派生する可能性の検討
⑦行政機関への「事故報告書」提出
⑧かかりつけ医、居宅介護支援専門員等に連絡
⑨施設の職員や入居者への説明
コメント☞現時点の客観的事実に基づき経過説明を行う(不安に思っている)
「利用者が窒息した」事故発生後の対応(「死亡」の場合)※事故発生翌々日
※事故発生翌々日
前項では、施設側として「事故発生翌日」の対応を示しました。本項では、「事故発生翌々日」に対応すべき事項を示します。
★事故発生翌々日の手順(①~⑦)
①ご家族へ連絡する
コメント☞ 以下のとおり話すこと。余計なことを話すとトラブルとなる場合が多い
「この度の●●様がお亡くなりになられたことは施設側としましても、非常に残念でございます。私どもがお役に立てることがございましたら、何なりとおっしゃってください。また、●●様のお通夜・告別式等が決まりましたら、当施設にもご連絡をお願いします」
②上記①によりご家族の反応を把握する
コメント☞このご家族の反応の状況については社内共有のこと
③お通夜、告別式への参加
コメント☞以下を「社長名(施設長名)」で準備する
・供花(●●●●円程度)
・弔電
・香典(●●●●円程度)
④今回の重大事故に対する保険会社の付保内容を確認
⑤利用者と施設との契約内容の確認
⑥利用者の残置物の確認
⑦利用者に対する返金額の確認
施設側として特に注意すること※非常に重要な対応
※非常に重要な対応
ここまで、施設において「利用者が窒息した」という重大事故が発生、利用者が死亡した場合を捉え、「事故発生当日」~「事故発生翌々日」まで、施設側が行うべき手順を示してきました。
皆さんが運営している施設において、このような手順が明快に示され、また、適切な対応を取る準備ができていたでしょうか。
こうした準備は、施設としてあらかじめ重大事故に備えて行うものであり、重大事故が発生した後で、いくら適切な手順・対応ができないことを悔いても、もう遅いのです。こうしたことからも、皆さんが運営されている施設において、前項までの手順・対応が適切に行えているかを今一度、確認することをお勧めします。
なお、こうした手順、対応を施設として行っていても、以下①~③についての対応を誤った場合、利用者のご家族と訴訟等に発展する可能性がありますので、慎重な対応が必要です。
★非常に重要な対応(①~④)
①施設側の回答者は「必ず1人に絞る」こと
コメント☞基本的に施設長や管理者
②「すみません」、「申し訳ありません」と言わないこと
コメント☞ 施設側に過失が無い場合、このような回答をすると訴訟に発展する可能性あり
③ご家族が「金銭」や「責任」の話に言及した場合は要注意
コメント☞ その場で回答しない。「社内に報告のうえ、後ほど回答します」と回答
④「知らない親戚」、「第三者」からの連絡、現れた場合は特に要注意
コメント☞ 基本的に回答しない。直ぐにキーパーソンに連絡する
対応が分からない場合※非常に重要
※非常に重要
重大事故が発生、対応が分からない場合、自分勝手に判断することは厳に慎まなければなりません。仮にご家族からの問合せがあり、その内容が分からない場合には、その場で回答しないで「後ほどご回答いたします」が正解です。
速やかに本社コンプライアンス部門や上長に報告・相談しましょう。会社としての判断の方向性を確認したうえで、改めて回答します。
まとめ
私自身、現在に至るまで、高齢者施設の施設長や管理者を通じて、様々な重大事故が発生した場合の対応を行ってきました。
今回のブログでは、「利用者が窒息した」重大事故発生時の手順・対応を確認していますか?」として、このような事故が発生し、利用者が不幸にも死亡したケースを取上げました。
現在まで、こうした介護サービス中の事故の判例や事故のケースを検討した資料やブログというものは存在していました。しかし、施設運営において、こうした重大事故が発生した場合、職員を含む施設側は「どのような手順で、何を行わなければならないのか」ということを「時系列」に示した資料を私は見たことがありませんでした。
こうしたことから、今回「重大事故が発生した場合(利用者の死亡)」の手順・対応を「時系列」に示してみました。今回は具体的な事例として「利用者が窒息した」場合を捉え、重大事故発生の対応をブログに記載しましたが、他の重大事故が発生した場合であっても、この手順・対応は参考になるものと思いますので、是非、ご活用ください。
最後になりますが、私はブログを書きながら、いつも「より原則に従い、間違いないように」と意識し過ぎてしまうことがあります。そうすると結果、ブログの内容は自体は合っているんだけど、このブログを読んでいる皆さんからすると、「内容が難しすぎてチンプンカンプン」ということが起こってしまうのです。
よって、今回の「「利用者が窒息した」重大事故発生時の手順・対応を確認していますか?」においては、以下のことを念頭に置きました。
「重大事故が発生した。施設として今、何をすれば良いのか手順・対応を手っ取り早く知りたい!」
私は、元政令市の法制担当であり、高齢者施設・介護事業者としても実地指導(運営指導)の対応経験は、過去18年間に渡り、多くの介護現場でも、またコンサルタントとしても、すでに約300件を超え、また数多くの監査対応を経験しております。
加えて、介護施設・障害者施設の顧問として、重大事故に関する対応や虐待・身体的拘束関係の問題につきましても、広く行政対応・研修等につき対応しています。
また、ご不安なことがございましたら、皆様からのご相談をお待ちしています。
では、今回のブログを終わりたいと思います。次回以降のブログもぜひ楽しみに。