2020年度に新型コロナウイルスが蔓延し、3年以上が経過しました。
やっと日常の生活が戻りつつある昨今ではありますが、今後行政機関における介護サービス事業者に対する運営指導も増加するであろうし、また運営指導が増加すれば、これに比例する形での監査も増加していくことが予測されるのでしょう。
運営指導と監査は急増します
結果を先に言いますと運営指導も監査もこれから急増します。
ただ急増しますと言われて不安が募るだけです。
ここで運営指導がどのくらい急増するのか以下に私なりに、ひとつの目安を示します。
これから運営指導が増加する目安
どのくらい行政機関による運営指導の実施が増加するのかといえば「約3倍」。
つまり、運営指導の実施率でいえば「約7%(新型コロナウイルス感染症時)→約20%(新型コロナウイルス後)」となると予想します。
理由は、下記【図1】参照して頂くと分かりますが、数値としては新型コロナウイルス感染症が蔓延した2020年度~2021年度の数値と比較し、それ以前の運営指導件数が「約3倍」となっているからなのです。
また、行政機関としても各事業所に対し、本来指定更新である6年間で1回は運営指導を執り行う目標を立てていたでしょうが、これを達成するように目標修正をしていくことでしょう。
監査の実施についても、運営指導が増加すれば、当然これに比例する形で当然増加していくはずです(例外的に事業所運営する皆さんの遵法意識が高まれば減少するかも知れませんが)。
新型コロナウイルス感染症以前と現状の運営指導状況の比較
行政機関による運営指導は、一般的に事業所指定の期間が6年間となっていることから概ね「6年に1回」運営指導が執り行われることが、行政機関の指導実施がひとつの目標であったと思われます。
しかし、2020年度に発生した新型コロナウイルスの蔓延により運営指導実施の目標ペースも狂ったでしょうし、また運営指導の実施形態自体にも大きな変化が現れました。
運営指導が急増すると言っても目安が分かりにくいので以下に目安を表します。
①2019年度以前の運営指導の実施ペースの目安
単年度に概ね介護サービス事業所の「20%実施」を目安に実施
理由
全事業所を20%で実施していけば、理論上ではあるが5年間で全事業所について運営指導を実施することができるのです。
②2020年度~2021年度の運営指導の実施ペース
下記【図1】を参照すると、この期間の運営指導の実施ペースは①の期間の1/3程度に運営指導のペースが落ち込んでいる。
事実当該期間の運営指導の実施率は約7%程度に落ち込んでいるのです。
実地指導(現 運営指導)の実施事業所数の年次推移(平成25年度~令和3年度)
【図1】
出典:厚生労働省 全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料(令和5年3月)
【図1】を見ると、平成25年度~令和元年度にかけて全国における実地指導(現 運営指導であり以下「運営指導」という)の実施件数は5万件半ば~6万件半で推移していたことが分かります。
反面、新型コロナウイルスが蔓延し始めた令和2年度以降は、運営指導の件数自体が2万件台に激減していることが分かります。
そもそもであるが、運営指導は行政機関によって、どのくらいの感覚で執り行われるのが概ねの目安なのであろうか。以下のひとつの目安を示します。
- 事業所が開設してから概ね1年以内に行われる。
- 事業所の指定は6年ごとの更新となっているので6年に1回行われる。
①については、事業所の新規開設を受け、介護保険サービスを提供する事業所であるが故に、適切に事業所運営ができているかを行政機関として見守り、かつこの早期の時点で事務処理等が適切に行われているかを指導するためです。
仮にここで適切でない事例があれば、新規開設より時間があまり経過していないことからも、修正しやすいという利点があります。よって、このような時期に運営指導を行っている行政機関もあるのです。
②については、事業所の指定更新の期間が「6年ごと」にその更新を受けなければならないことからも、当該指定更新期間内に事業所運営が適正に運営されているのかを確認するための個別指導なのです。
よって、行政機関も6年に1回の目安で運営指導を行う目安で計画を立てているのです。
法的根拠
- 介護保険法第70条の2(指定の更新)
第41条第1項本文の指定は、6年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う。
事業所として運営指導の準備をしよう
2020年度から新型コロナウイルスが蔓延し、様々な対応を行う必要があったため、事業所運営にも混乱があったことでしょう。
しかし、前述したとおり今後、行政機関による事業所に対する運営指導は間違いなく急増します。
特に以下の主な事項を挙げておきますので、いつ運営指導の通知があっても驚かないように、しっかり準備をしておきましょう。
- 指定申請書類・変更届
- 人員体制の確認(勤務表・資格証)
- 契約書類・重要事項説明書
- 介護サービス提供記録・計画書類
- 事故報告書・苦情報告書
- 身体拘束関係
- 加算関係の算定要件