令和6年度介護報酬改定についての道筋を考える

介護報酬改定

 令和6年度の介護報酬改定について改定が実施されるのは、令和6年4月1日です。いよいよ本年9月からの社会保障審議会介護給付費分科会において、議論が本番を迎えることとなります。

これらの議論や経過を踏まえないと、実際に介護報酬改定となった際にも対応することは困難です。そう言った意味でも、このブログでは令和6年度介護報酬改定において、現時点まで介護報酬改定に先立ち、この介護保険制度や介護報酬について、どのような議論や論点が出されてきたのかを確認したいと思います。

この介護報酬についての具体的に方向性が決定するは、この社会保障審議会介護給付費分科会にではありますが、その大枠や議論については「財政等審議会」や「介護保険部会」においても議論されてきました。

 では、それぞれの議論の内容についての要点を確認してみましょう。

なお、各項目の横には今回の介護報酬改定において「実施される項目か否か」を示してみました。

1.財政等審議会においての議論

 社会保障分野における介護保険においては、主に以下の項目が議論されました。

やはり2000年に介護保険制度が開始され、ここで第9期を迎える介護保険制度ですが、その予算規模も13兆円に達する勢いで、今後も持続可能な制度維持をどのように図っていくのかというのが重要な課題でしょう。

そうした中で財政等審議会において出された以下の項目に共通するのは「介護保険支出を如何に圧縮するか」です。

①事業者の経営状況の見える化

これは介護報酬を受けた経営者側の財務状況を明らかし、その経営状況より利益が経営者側から従業員へ適切に配分が行われているのか、また内部留保についても適切かを把握すること目的です。

②介護保険利用者負担の見直し

 介護保険の自己負担分について「2割負担」、「3割負担」の範囲が変更となるものと思われます。この各負担割合の区分は「課税所得金額」によります。

③ケアプランの利用者負担

介護保険の利用する場合、介護認定が必要です。そして在宅において介護サービスを利用する場合、居宅介護支援事業所においてケアプランを作成してもらう必要があります。

このケアプランを作成してもらうにあたり、現時点で介護保険利用者に費用負担はありません。今回のケアプラン作成について介護保険利用者に費用負担を求めようという話です。

④要介護1、2の総合事業への移行

 2015年より経過期間を3年間付した形で総合事業がスタートしました。具体的には、要支援1、2の「訪問介護」、「通所介護」について、「保険⇒事業」に財政支出やサービス提供の在り方が変更となりました。

 今後、要介護1、2についても、この総合事業の範疇に組入れて行きたいという話です。

2.介護保険部会での議論

財政等審議会の議論を受け、介護保険部会でも次の項目が議論されました。財政等審議会で議論された内容を受け、実際に介護保険制度として実際に「実施」、「見送り」を実質的に決定したのは、この介護保険部会ということになります。

①・地域密着型複合型サービス(訪問+通所)新設【実施】

 地域密着型サービスにおいて新類型としてこのサービスが誕生することとなります。ただ、現状「小規模多機能系サービス」がサービス提供されていることから、そのサービス内容をどのようにしていくのかを考える必要があると思います。

②科学的介護の推進(訪問介護、居宅介護支援)【実施】

 令和3年度介護報酬改定において、LIFEに関連する加算が導入されました。今回の令和6年介護報酬改定では、訪問介護・訪問看護・居宅介護支援等についてもLIFEに関連する加算が導入される方向性です。

③給付適正化・地域差分析(併設事業所等)【実施】

この論点は、前々回(平成30年度)の介護報酬改定以来、クローズアップされている議論です。具体的には「集合住宅に併設する介護事業所の減算」についての議論です。現在も減算が適用されていますが、今後、10月末の介護経営実態調査の収支差率等の状況により、より厳しい判断が出てくる可能性があります。

④文書負担軽減【実施】

 事業所から行政への届出の電子化や、運営指導等についての事前書類の提出の在り方、事業所としての記録保管を電磁的記録への変更等について議論されます。

⑤財務状況の見える化【実施】

財政等審議会でも議論された項目です。昨今、事業運営において、水光熱費や人件費の上昇により、事業運営が厳しい状況から、介護報酬についてもこの点を考慮に入れた改定を行って欲しいとの議論があります。

反面、介護報酬を受けた経営者側は財務状況を明らかにしたうえで、その利益が経営者側から従業員に適切に配分が行われているのか、また内部留保についても適切かを把握することが判断の前提となるのは明白です。

⑥1号保険料負担の在り方【検討】

 介護保険料について1号保険者の負担金額について、全国平均の介護保険料を、介護保険制度が開始された2000年と2021年を比較すると、以下のとおりです。

 ●2000年・・・月額2,911円
 ●2021年・・・月額6,014円

 介護保険料については、保険者ごとの地域差も当然ありますが、上記のとおり全国平均の介護保険料を上記時点で比較しても「約2倍」の負担となっていることが分かる。

 確かに1号保険者の負担金額が上昇している事実はあるが、介護保険制度に関する負担の膨張、受益者負担の観点から、今回の介護報酬改定においても、この議論はしっかりと検討されるものと思われます。

⑦ケアプラン利用者負担【見送り】

理由は、業界団体等の反対もですが、ケアプランに費用負担を求めると、介護保険利用者自身がケアプランを作成、これを認定してもらうために地域包括支援センター等にて対応するということが現実的ではなく、まだ準備に時間を要するということなのだと思います。

⑧要介護1、2の総合事業への移行【見送り】

サービス提供の中心は「地域資源」、いわゆるボランティアやお元気な高齢者を活用するということですが、現時点も「従来相当のサービス提供」の割合が高く、次回の介護報酬改定では見送りということになります。

3.介護給付費分科会の議論

 社会保障審議会介護給付費分科会においての議論は、これからが本番となります。今後各業界団体のヒアリングの結果、介護報酬における加算の算定状況を踏まえ、本年10月末に発表される介護事業経営実態調査の数値によって、方向性が見えてくると思います。

 なお、今後の介護給付費分科会の予定は以下のとおりとなります。

 ●介護報酬改定に関する議論(各サービスの状況、加算の算定状況)
 ●介護事業経営実態調査の数値把握(10月末)
 ●介護報酬改定に先立ち運営基準変更(12月中旬)
 ●介護報酬に関する事項の判明(来年1月下旬)
 ●介護報酬改定(来年4月1日)

4.介護給付費等実態統計

今後、10月末の各サービス毎の「介護事業経営実態調査」によって、令和6年介護報酬改定の方向性が見えてくる。

あくまでも現時点で、「介護事業経営概況調査」、「介護給付費等実態統計」を基に次期介護報酬改定の論点を、私なりに推測すると以下のとおりとなります。

●訪問介護⇒集合住宅の在り方、特に併設事業所としてどのように考えるか。
●通所介護⇒収支差率が1.0%、すでに供給過剰であるのか。
●特定施設入居者生活介護⇒収支差率4.0%、給付総額が6,000億円超となっている。
●居宅介護支援⇒収支差率4.0%、地域包括の仕事を協力することが必要。
●認知症対応型共同生活介護⇒収支差率4.9%、総量規制継続か。
●介護老人福祉施設⇒収支差率1.3%、2019年比較で待機者5万人減、今後、特例入所と医療の扱いを検討していく

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