【税理士が解説】2025年(令和7年度)最新版
虐待対策検討委員会(虐待防止委員会)を開催しました※障害福祉サービス【第1回】
皆さん、こんにちは、税理士・行政書士の山田勝義です。こうして書くと、「この人は、単に税理士・行政書士で、実務に関わったことがないのでは?」と思われるのではないでしょうか?笑
実は、私自身、もともと政令市で法制担当であり、かつ監査業務等にもかかわっておりました。
また、現在は障害福祉サービス等の事業所顧問に就任、実際に現場での死亡事故、虐待、利用者同士の障害等、様々な実例に接し、ご家族や行政機関との対応までおこなっております。
こうした中で、今回のブログでは、障害福祉サービス等として初めて「2025年(令和7年度)最新版 虐待対策検討委員会(虐待防止委員会)を開催しました【第1回】」という題名でブログを書きたいと思います。
なぜ今回から、私が障害福祉サービス等について、こうしたブログを書き始めようと考えたのかをここで簡単に紹介します。それは以下の5つの理由からです。
★5つの理由
・障害福祉サービス(グループホーム)の一括管理システムの会社の顧問になったこと
・上記により障害福祉サービス等の事業者の皆さまに研修を提供することになったこと
・「障害福祉サービス等」の、こうした研修やブログが圧倒的に少ないこと
・この事業で不祥事が続いており、私の行政担当であった知見を通じ、適切に事業運営して欲しいこと
・障害福祉サービス等の事業者の皆さんを応援したいこと
特に、今回の虐待対策検討委員会や虐待防止研修について、障害福祉サービス等事業者の皆さまは、事業運営を行ううえで、これらを行うことが「法定」とされています。つまり、これらを事業所として実施していなければ、運営指導の指摘事項となり、かつ虐待防止措置未実施減算となります。
こうしたことから、今後、この障害者虐待対策検討委員会(虐待防止委員会)についてのブログを「年2回」のペースでアップして行こうと思います。
また、このブログの内容に留まらず、最新の障害福祉サービス等の事業所の現場における虐待の事例、運営指導・監査の事例や報酬改定の動向等についても言及、事業者が注意すべき有用な事項をお伝えすることができればと思います。
では、早速、事業者として確認しなければならない事項をまとめましたので、一緒に確認していきましょう。
事業者として確認・対応しなければならないこと
まず、事業者として確認しなければならないことは、この「虐待防止措置未実施減算」は、障害福祉サービス等事業所として運営指導(実地指導)での最重要チェックポイントです。
この「虐待防止措置未実施減算」が適用される障害福祉サービス等は、全ての障害福祉サービス等の類型が対象です。
私が、虐待防止研修を開催していると、よく他の事業者から、他の虐待防止研修では、運営基準改正をはじめとする法的な根拠の説明ばかりでストレスがあるという話を伺います。こうしたことから、このブログでは事業者が 手っ取り早く事業所として対応することだけお伝えすることにします。
この「虐待防止措置未実施減算」では、以下の事項を事業者として早急に対応してください。
そうすれば、事業所として運営指導(実地指導)において、現時点で「虐待防止措置未実施減算」に引っ掛かることはありません。
※【重要】事業所として対応する事項(ア~ウの3項目)
ア 虐待の発生のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等の活用可能)を「1年に1回以上」開催するとともに、その結果について、従業員の周知徹底を図る
イ 従業員に対し、 虐待の防止のための研修を「1年に1回以上」実施すること
ウ 上記措置を適切に実施するための担当者を置くこと
次に、アの「虐待対策検討委員会」と、ウの「虐待防止研修」について、「年に何回開催しなければならないのか?」ですが、以下の回数を開催しておけば大丈夫です。
ア 虐待対策検討委員会については、最低「年1回」実施
・虐待の発生のための対策を検討する委員会(虐待防止委員会)を定期開催
・当該委員会は「テレビ電話装置等」による活用可能
・議事録の作成、参加者名簿の作成
・当該委員会の内容を議事録等で職員に周知徹底を図る
☞ 「虐待対策検討委員会」と、「虐待防止研修」を同日に「一緒に開催」してしまうことも効率的です。
イ 虐待防止研修については、 「年2回」以上、若しくは「年1回」以上の実施
・従業員に対し虐待防止の研修を開催する
・上記研修を定期的に実施する
・研修資料の保管、参加者名簿の作成
上記のとおり、私が示した対策を事業所として講じて置くことによって、運営指導(実地指導)で指摘事項や虐待防止措置未実施減算を受けるようなことないのです。
事業所として、こうした事項が対応できているか、今一度、確認・対応しましょう。
「虐待防止措置未実施減算」の算定要件等について確認する
すでに「虐待防止措置未実施減算」が適用開始されており、運営指導(実地指導)の際、事業所として対応していないと減算対応ということになってしまいます。こうしたことから、根拠、単位数・算定要件等について、改めて確認しておきましょう。

【算定要件等】
虐待発生又はその再発を防止するための以下の措置が講じられていない場合に減算する。
ア 虐待の発生のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等の活用可能)を定期的に開催するとともに、その結果について、従業員の周知徹底を図ること
イ 従業員に対し、 虐待の防止のための研修を定期的に実施すること
ウ 上記措置を適切に実施するための担当者を置くこと
繰り返しとなりますが、この「虐待防止措置未実施減算」は、すでに本適用となっています。
そして、「虐待防止措置未実施減算」で、事業者が特に注意しなければならないことは、 事業者に虐待の事実の有無にかかわらず、上記の高齢者虐待防止措置未実施減算の算定要件ア~エが事業者として対応できていない場合、事業所として利用者全員に減算が適用されるということです。
「虐待防止措置未実施減算」が実施された場合の要注意点
この 「虐待防止未実施減算」が適用されるのは、虐待が発生した場合ではなく、基準に規定する措置を講じていない場合に、利用者全員について所定単位数から減算されるのです。これを「箇条書き」でまとめると以下のとおりです。
・減算の適用は虐待が発生した場合ではないこと。
・基準に規定する措置(前項の要件ア~ウ)を講じていないこと。
・利用者全員についての所定単位数からの減算であること。
・「事実が生じた日から3月後に報告」とあるが、「減算は3月ではまず終わらない」。
上記のとおり、「減算は3月ではまず終わらない」と記載していますが、なぜなのでしょうか。まず、不幸にも運営指導(実地指導)で「虐待防止措置未実施減算」課されてしまった場合、事業者がやるべきことは以下①~④のとおりです。
①速やかに改善計画を都道府県知事に提出すること
②事実が生じた月から3月後に改善計画に基づく改善状況を都道府県知事に報告
③事実が生じた月の翌月から改善が認められた月までの間について減算
④利用者全員について所定単位数から減算
つまり、運営指導等で事業者が要件ア~エを満たさないと行政機関に判断されてしまった場合 「虐待防止措置未実施減算」が適用され、 一旦適用されてしまうと事業者は利用者全員について所定単位数から減算を最低3か月間適用されるということなのです。
これを分かりやすく以下の【表1】で示すと次のとおりです。

つまり、【表1】のように、実際に月を当てはめてみると分かりやすいと思います。
・4月・・要件を満たさない事実が判明(運営指導等)、速やかに①の改善計画を都道府県知事に提出
・5月・・③の「事実が生じた月の翌月」から減算開始
・6月
・7月・・②の改善状況を都道府県知事に報告。③のとおり「改善が認められた月」まで④のとおり全員減算
【表1】のとおり、こうなると7月には都道府県知事に改善状況の報告がなされ、この報告により「改善が認められた」場合に、はじめて減算が終了するということなのです。
つまり、上記の【表1】だと、5月から事業者は「利用者全員について所定単位数の減算が最低3か月間適用される」ということが分かります。
また、上記で「最低3か月間適用」と記載しましたが、この改善状況の報告が認められないと、さらに減算適用期間が長くなるということなのです。
「虐待の類型」を確認する
虐待という言葉から「相手を叩く、蹴る」というというものが虐待(身体的虐待)だと感じますが、それだけが虐待ではありません。以下の①~⑤の項目も虐待です。
虐待が発生した場合、私が虐待を起こした職員の面談を行うと、 意外にもその本人自体に虐待を起こしたという意識が欠落していることが多いのです。理由を聞くと、「しつけのため」、「家族にもそのような対応をしていた」と悪びれた様子もなく、そもそも自分が虐待を起こしていると思っていないというようなケースもあるのです。
このような考え方の職員が利用者の方々を対応すれば、いくら虐待防止のための研修を実施しても、当然事業所として虐待が無くなるはずもありません。
このことからも、以下①~⑤の虐待の類型を事業所職員の皆さんで、それこそ「繰り返し、繰り返し」理解する必要があるのです。
①身体的虐待
利用者の身体に外傷が生じ、または生じる恐れがある暴行を加えること。
【具体例】
殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、ヤケドを負わせる、溺れさせる、異物の飲ませる、首を絞める、一室に拘束する
②性的虐待
利用者にわいせつな行為をすること、または利用者にわいせつな行為をさせること。
【具体例】
利用者への性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする
③ネグレクト
利用者の生活を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、利用者の同居人による身体的虐待・性的虐待・心理的虐待と同様の行為の放置、その他監護を著しく怠ること。
【具体例】
家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車内に放置する、重い病気となっても病院に連れて行かない
④心理的虐待
利用者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、利用者が同居する家庭における配偶者に対する暴力等、利用者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
【具体例】
言葉による脅し、無視、差別的扱い、目の前で家族に対して暴力を振るう
⑤経済的虐待
高齢者・障害者の財産を不当に処分すること、その他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。
【具体例】
日常生活に必要な金銭を渡さない・使わせない、本人の自宅等を無断で売却する、年金や預貯金を本人の意思・利益に反して使用する
利用者の保護と行政機関への報告を直ぐに行うこと
新聞報道等を見ているといまだ虐待が発生していると虐待が発生しているという事実があります。
「どのような理由があろうとも決して虐待は許されるものではありません」
事業所のみなさんは、日頃の業務、様々な事象の中で「原則と現実のはざま」に悩まれることが多いと思います。
しかしながら、この 虐待または虐待を受けた恐れのある利用者を発見したのであれば、事業者は利用者の保護と行政機関への報告を直ぐに行うことが必要です。
この 特に、行政機関への報告が遅くなればなるほど、事業者として「虐待の事実は隠ぺいしようとしたのではないか」と疑われることがあります。
こうした、ここ最近でも、大手障害福祉サービス事業者(グループホーム等)で、食材費の不適切な対応が利用者に対する「経済的虐待」として認定され、当該事業者は「連座制」の適用を受けたことは記憶に新しいところです。
こうした虐待が発生した場合、行政対応やマスコミ等の対応を誤ると、様々な面でのリピュテーショナルリスクが発生し、前述のように企業として事業継続を行うことができなくなってしまうのです。
「虐待対策検討委員会」についての議事録を掲載します。
私のクライアントの皆様の事業所では、すでに私からの資料提供のもと、「虐待対策検討委員会」を継続的に実施しています。
反面、「この虐待対策検討委員会では、どのような内容の話をしたらよいのか」という質問をよく受けるのです。
こうしたことから、実際に私が主導、開催した「虐待対策検討委員会」における議事録を以下のとおりお示しいたします。
これは私たちが当該委員会で議論した内容をお示しすることにより、多くの障害福祉サービス等の皆さんが、虐待対策検討委員会を開催するうえでの「呼び水」になることが目的です。
では、その議事録を以下に示します。
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令和7年●●月●●日
▲▲▲事業所
書記 ●● ●●
議事録(虐待対策検討委員会)
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日時 令和7年●●月●●日(月) 午後1時00分~
場所 ▲▲▲事業所 事務所
参加者 鈴木管理者、佐藤、田中、山田(書記)
内容 職員と利用者との関係、問題(虐待の可能性)があった場合の対応について
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1.職員の利用者に対する言葉遣いはどうか。
鈴木管理者より、日頃から利用者に対する言葉遣いの指導を行っている(「さん」つけ)。親しみも大切であるが、そこからお互いの人間関係が崩れる場合がある。
この部分は、事業運営の中で繰り返し、指導していく。
2.現在まで従業員と利用者との関係で虐待となるようなケースは無いか。
現時点、従業員と利用者との関係で虐待となるようなケースは生じていない。今後、虐待が疑われるようなケースが生じた場合は、速やかに本社に報告する。こうした状況が生じた場合は外部の専門家の活用も検討する。
3.職員と従業員との相性が悪い場合の対応について。
現時点も、従業員と利用者の相性が悪い場合は適宜、担当を交代している。虐待が起こり得る状態は「1:1」となるような状況の場合に生じる可能性が高くなる。こうした状況とならないような仕組み作りも検討していく。
4.問題(虐待の可能性)があった場合の手続き、手順について。
他社における虐待発生の事例を確認する。実際に虐待が疑われるようなケースが生じた場合は、速やかに本社に報告、そしてその事実を行政機関に報告する手順を徹底することを確認する。
5.虐待防止措置未実施減算が適用とならないよう確認
「虐待防止措置未実施減算」について、この減算に係る算定要件を確認するとともに、事業所として行わなければならない義務を確認した。
【事業所としての義務】
ア 虐待の発生のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等の活用可能)を定期的に開催するとともに、その結果について、従業員の周知徹底を図ること
イ 従業員に対し、 虐待の防止のための研修を定期的に実施すること
ウ 上記措置を適切に実施するための担当者を置くこと
【事業所としての今後の対応】
ア 委員会は年1回以上開催(今回実施済。次回来年2月開催予定)
ウ 虐待防止研修は年1回以上開催(今回実施済。次回来年2月実施予定)
エ 担当者(●●管理者)
以上
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まとめ
今回のブログのテーマは、障害福祉サービス向けに初めて「2025年(令和7年度)最新版 虐待対策検討委員会(虐待防止委員会)を開催しました【第1回】」として書いてみました。
今後も、障害福祉サービス等に係るブログについて、運営指導(実地指導)、監査等をはじめ、障害福祉サービス等の事業全般に係る事業所の皆さまにとって有用な情報を書いてまいります。
また、今後もこの「虐待対策検討委員会(虐待防止委員会)」を開催し、議論した内容を議事録として継続的に提示します。
最後に、ご確認頂きたいのが、くどいようですが、この「虐待防止措置未実施減算」について、以下の事項について再確認をお願いします。
「虐待防止措置未実施減算」は施設において虐待が発生した場合は減算を算定する要件ではないのです。あくまでも 「虐待発生又はその再発を防止するための措置が講じられていない場合に減算する」ということです。
今回も本ブログをお読みいただき、ありがとうございました。引き続き事例等を交えながら深掘りしたブログを書いていこうと思います。
それでは次回のブログもお楽しみに。