【税理士が解説】グループホームでの地域連携推進会議を開催しましたか?

障害福祉サービス

 「地域連携推進会議」は、障害福祉サービス事業所の運営の透明性向上と地域との連携強化を目的に導入されました。

2024年度の障害福祉サービス報酬改定に伴い、努力義務としてスタート、2025年4月から完全義務化されています。この地域連携推進会議を開催する目的は、利用者の地域生活支援や権利擁護を強化する施策です。

特に共同生活援助(グループホーム)や障害者支援施設が対象となっており、この地域連携推進会議の開催状況について、事業所や施設に対する運営指導で必ず確認される事項となっていることから、今回、これについて根拠や趣旨、事業所や施設が行わなければならないことを取り纏め、ブログを書くことにしました。

では、早速事項以下、ご説明します。

☞なお、文末に、「地域連携推進会議へのご参加のお願いについて(依頼)」、「地域連携推進会議参加承諾書」、「議事録(ひな形)」をダウンロードできるようにしておきます。皆様、ぜひ、ご利用ください。

地域連携推進会議の開催義務が課されているサービス類型

前述のとおり、「地域連携推進会議」は、2024年(令和6年)4月から努力義務として導入され、2025年4月から、すでに完全義務化されています。

確認ですが、この地域連携推進会議の開催義務が課されているサービス類型は以下①②です。

【地域連携推進会議の開催義務となる法的根拠とサービス類型】

①共同生活援助(グループホーム)
☞根拠:「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年9月29日厚生労働省令171号)」第210条の7

②障害者支援施設
☞根拠:「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年9月29日厚生労働省令172号)」第24条の2

つまり、開催義務の対象は、共同生活援助(グループホーム)や障害者支援施設となっており、この開催状況については、本年度から事業所や施設に対する運営指導で必ず確認される事項であり、この開催目途が立っていないと指摘事項となります。

こうしたことから、 先ず事業所や施設で行うべきことは、今年度に「地域連携推進会議の開催予定を立てる」ということになります。

では、次項以下で事業所や施設において地域連携推進会議で行うべきことを説明します。

地域連携推進会議でグループホームや障害者支援施設が行わなければならないこと

地域連携推進会議を開催する目的は、利用者と地域の関係構築、サービスの透明性・質の向上、利用者権利の保護です。特に、利用者と地域社会の接点を増やすことで、閉鎖的な運営を防ぎ、サービス品質を高める狙いがあります。

また、この会議の全ての構成員は見学者(以下「地域連携推進員」という)となります。つまり、この地域連携推進員が事業所や施設を訪問することを通じて、地域連携推進員から「専門家ではない視点からの気づき」等が得られ、会議を開催する目的を達成する一助となります。

特に、従来から実施している虐待防止研修等の研修や個別支援計画がうまくいっているかを「外部の方々」に見て頂く良い機会となります。

【地域連携推進会議の開催の目的】

 ①地域との関係構築:利用者と地域住民の交流を促進し、相互理解を深める
 ②透明性の確保:事業所の運営状況を地域や関係者に公開し、信頼性を高める
 ③サービス品質の向上:外部の視点を取り入れ、支援内容や環境の改善を図る
 ④権利擁護について、利用者の意見を反映し、不適切な扱いや虐待を防止する

とは、言われても分かりにくいので、ここでは地域連携推進会議にてグループホームや障害者支援施設が行わなければならないのかを「手っ取り早く」、「箇条書き」で示します。

【地域連携推進会議で行わなければならないこと】

 ①地域連携推進会議の「議事録」は事業所のウェブサイトや掲示板等で公開必須
 ②年1回の見学が必須(例えば、複数の施設を運営する場合、各施設への年1回の見学が必要ということ。)
 ③会議では、地域住民との関係強化やサービス改善のための議論を行う
 ④会議の構成員は、利用者、家族、地域住民、専門家、市町村担当者などで構成する(地域連携推進員)
 ⑤会議における報告等の記録は、5年間保存しなければならない。
 地域連携推進会議の設置等に代えて、外部の者による評価及び当該評価の実施状況の公表又はこれに準ずる措置として都道府県知事が定めるものを講じている場合には、適用しない

☞つまり、事業所で都道府県知事が定める「サービスの第三者評価の実施状況(実施年月日、実施した評価機関名称、評価結果)」等の措置を講じている場合には、地域連携推進会議を開催しなくても良いということです。

☞詳細な地域連携推進会議の実施要件については、「4.地域連携推進会議の「実施要件」とは」を必ずご確認ください。

地域連携推進会議で想定される「参加者」とは

 この地域連携推進会議での想定される参加者(地域連携推進員)は以下①~⑥の者となります(厚生労働省ガイドラインおよび自治体資料に基づく)。

【想定される参加者】
 ①利用者(本人が参加できない場合は保護者や代理人
 ②家族(利益相反を避けるため、他施設利用者の家族が望ましい
 ③地域住民(町内会、NPO、学校、福祉団体等)
 ④専門家(障害福祉や共同生活援助に知見のある者(例:社会福祉士、相談支援専門員))
 ⑤市町村担当者(事業所を管轄する自治体の障害福祉担当者)
 ⑥その他(必要に応じて事業所の管理者や支援員が参加)
☞想定される参加者を定めているのみで「参加人数」は定められていない!

地域連携推進会議の「実施要件」とは

 基準上、地域連携推進会議は、以下の開催要件に従って行われます。

【実施要件】
 ①会議は「年1回以上」開催が必須
 ②事業所や施設への実地見学を年1回以上実施(会議と同日でも可)※見学は原則対面による
 ③地域連携推進会議はオンライン開催可能
 ④家族(利益相反を避けるため、他施設利用者の家族が望ましい)
 ⑤議事録については、会議内容を記録する
 ⑥上記④の議事録を事業所や施設のウェブサイト、掲示板、または自治体への提出を通じて公開
 ⑦複数の事業所や施設で、同一法人が複数のグループホーム等を運営する場合、施設ごとに年1回の見学が必要
 ⑧この会議では、利用者の生活状況、サービス提供の課題、地域との連携策などを議論
 ⑨事業所や施設において、地域とのつながりが希薄な場合、「参加者の確保」が課題となる(自治体の協力や地域団体の関与が推奨される)
 ⑩利用者の参加については、その障害の程度に応じて、意思表明の支援(例:代弁者や補助ツールの活用)が必要である
 ⑪会議における報告等の記録は、5年間保存しなければならない
 ⑫地域連携推進会議の設置等に代えて、外部の者による評価及び当該評価の実施状況の公表又はこれに準ずる措置として都道府県知事が定めるものを講じている場合には、適用しない
 ⑬この会議での議事録の公開が不十分な場合、運営指導の際に「指摘事項」となる可能性がある(次回報酬改定では減算項目となる可能性あり)
 ⑭「地域連携推進会議の開催」についての項目を「運営規程」に記載すること

☞「運営規程」に記載すれば「契約書」、「重要事項説明書」には記載の必要なし。なお、以下に運営規程における「地域連携推進会議等」の追加条項の参考例を記載します。

【運営規程における「地域連携推進会議等」の追加条項の参考例】

(地域連携推進会議等)

第16条 事業所は、利用者及びその家族、地域住民の代表者、福祉や経営について知見を有する者並びに市町村の担当者等(以下「地域連携推進員」という。)に対し、提供しているサービス内容等を明らかにし、地域との連携により、効果的な事業運営、サービスの透明性及び質の確保、利用者の権利擁護等を目的として、地域連携推進会議を設置する。地域連携推進会議をおおむね1年に1回以上開催するほか、地域連携推進員が、指定共同生活援助事業所を見学する機会をおおむね1年に1回以上設けるものとする。

 なお、地域連携推進会議における報告等の記録は、5年間保存するとともに、公表するものとする。

まとめ

今回のブログでは、2025年4月から地域連携推進会議の開催が、共同生活援助(グループホーム)や障害者支援施設では完全義務化されています。

この地域連携推進会議の開催状況について、事業所や施設に対する運営指導で必ず確認される事項となります。

この運営指導の際、行政機関より前述の会議開催における実施要件に該当しているか確認されるとともに、当該会議での議事録の公開が不十分な場合には、運営指導の際「指摘事項」となる可能性があります(次回報酬改定では減算項目となる可能性あり)。

今年度から、運営指導は劇的に増加します。こうしたことから、この論点については、引き続き注目して行こうと思います。

今回もブログをお読みいただき、ありがとうございました。次回以降のブログもお楽しみに。

地域連携推進会議へのご参加のお願いについて(依頼).docx

地域連携推進会議参加承諾書.docx

【サンプル第1回】議事録(地域連携推進会議).docx